【分野】スピンエレクトロニクス

【タイトル】X線自由電子レーザーでスピンの超高速ダイナミクスを観測

【出典】
Kohei Yamamoto, Yuya Kubota, Motohiro Suzuki, Yasuyuki Hirata, Karel Carva, Marco Berritta, Kou Takubo, Yohei Uemura, Ryo Fukaya, Kenta Tanaka, Wataru Nishimura, Takuo Ohkochi, Tetsuo Katayama, Tadashi Togashi, Kenji Tamasaku, Makina Yabashi, Yoshihito Tanaka, Takeshi Seki, Koki Takanashi, Peter M Oppeneer and Hiroki Wadati, “Ultrafast demagnetization of Pt magnetic moment in L10-FePt probed by magnetic circular dichroism at a hard x-ray free electron laser”, New J. Phys. 21 (2019) 123010.

【概要】
X線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAの硬X線ビームラインであるBL3において、強磁性を示す合金である鉄白金薄膜を用いて、硬X線領域の時間分解X線磁気円二色性測定(XMCD測定)に成功した。本成果により、光照射による磁性制御現象の鍵が、鉄と白金の消磁時間の差にあることが示された。

【本文】
近年、電子の性質を光により超高速に制御する研究が盛んに行われてきている。とくに磁石としての性質を担うスピンを応用した、スピントロニクスの研究は応用の面からも高い関心が寄せられている。そこで本研究では、数十フェムト秒(1フェムト秒は1000兆分の1秒)の超短パルスX線を提供するSACLAのBL3において、時間分解XMCD測定を行った。測定対象には、強磁性合金である鉄白金の薄膜を選んだ。この薄膜は、レーザー光照射による光誘起磁化反転が可能な材料であることが報告され、多くの興味を集めている。時間分解XMCD測定と、可視光の時間分解磁気光学カー効果の結果、強磁性鉄白金薄膜において鉄と白金で異なる時間スケールのダイナミクスを示すという、鉄と白金の光誘起磁気状態のモデルを明らかにすることに成功した。これは、レーザー光による磁化反転現象の鍵が、鉄と白金の消磁時間の差にあることが示す。今後のスピントロニクス研究において、レーザーによる磁化反転などの超高速スピン操作を目指す際の、重要な指導原理が得られた。

(兵庫県立大学 和達大樹)