【分野】磁気物理

【タイトル】磁性超薄膜ヘテロ構造における界面形成ダイナミクス

【出典】
“Dynamic interface formation in magnetic thin film heterostructures”
Shuhei Nakashima, Toshio Miyamachi, Yasutomi Tatetsu, Yukio Takahashi, Yasumasa Takagi, Yoshihiro Gohda, Toshihiko Yokoyama, and Fumio Komori
Advanced Functional Materials 29, 1804594 (2019).

【概要】
Shuhei Nakashimaらのグループは走査トンネル顕微鏡に軟X線磁気円二色性測定を組み合わせた研究手法により、反強磁性/強磁性Mn/Fe超薄膜ヘテロ構造の界面形成ダイナミクスとその磁気特性の相関を原子スケールで明らかにした。

【本文】
磁気記録媒体のさらなる高密度化への期待から情報の書き込み・読み出しに用いられる磁気ヘッドの小型化・高性能化が求められている。磁気ヘッドは反強磁性/強磁性超薄膜ヘテロ構造から構成されており、性能向上のためにはより安定な界面磁気結合状態を実現する必要がある。しかしながら、界面での構造や電子・磁気状態の原子レベルでの空間的乱れの影響で、実際の磁気結合エネルギーは理想界面に比べ2桁程度小さく、その向上が長年の課題となっていた。
東京大学物性研究所のShuhei Nakashimaらのグループは走査トンネル顕微鏡(STM)に放射光軟X線磁気円二色性(XMCD)測定を組み合わせ、反強磁性/強磁性Mn/Fe超薄膜ヘテロ構造界面の構造と電子状態の原子スケールでの違いが磁気結合状態に及ぼす影響を調べた。結果、反強磁性Mn超薄膜の積層数の増大に伴い、強磁性Fe超薄膜の容易磁化方向が面直方向から面内方向に2段階で変化するスピン再配列転移を起こすことがわかった。Mn/Fe超薄膜ヘテロ構造の界面形成過程における原子スケールSTM構造観察/分光測定や第一原理計算の結果も併せて、最初のスピン再配列転移はFeMn不規則合金形成による界面近傍の格子定数の変化と表面粗さの増大に、次のスピン再配列転移はFeMn規則合金形成と強磁性Fe超薄膜間の電子混成に由来することを明らかにした。本研究によって磁性超薄膜ヘテロ構造の磁気特性を理解する上で、接合界面における構造と電子状態の原子スケールでの動的変化等、界面形成ダイナミクスの重要性が示された。

(東京大学 宮町俊生)