【タイトル】磁性体に光を照射することによって電流に付随して生じる熱流の方向や分布を自在に制御できることに成功

【出典】
・Jian Wang, Yukiko K. Takahashi, and Ken-ichi Uchida, “Magneto-optical painting of heat current”, Nature Communications volume 11, Article number: 2 (2020).
・https://www.jst.go.jp/pr/announce/20200108/index.html

【概要】
 ナノスケールにおける熱エネルギー制御原理・技術に注目が集まる中、物質・材料研究機構(NIMS)は、磁性体に光を照射することによって電流に付随して生じる熱流の方向や分布を自在に制御できることを初めて実証した。この熱流分布の能動的制御において加熱・冷却能を大幅に向上させることができれば、スピントロニクスデバイスにおける熱制御に利用できる可能性がある。

【本文】

 NIMSは、磁性体に光を照射することによって電流に付随して生じる熱流の方向や分布を自在に制御できることを初めて実証した。この実証実験には磁性体特有の熱電効果の1つである「異常エッチングスハウゼン効果」と呼ばれる現象を利用している。異常エッチングスハウゼン効果によって生成された熱流の方向は、磁性体の磁化方向によって決定されるため、磁化を反転させれば熱流の方向も反転する。すなわち、光誘起磁化反転現象を示す磁性体(たとえばCo/Pt多層膜などの光磁気記録材料)においては、光照射による磁化反転に伴って、異常エッチングスハウゼン効果によって生成される熱流を反転させることができる。ここで、熱流の反転はレーザー光を照射したエリアにおいてのみ生じ、熱流の方向は光が右回り円偏光か左回り円偏光かに依存して決定される。この手法を用いれば、光の照射パターンや偏光状態を変えることにより、磁性体中の熱流分布を自由にデザインすることが可能になる。
 論文では光磁気記録材料である[Co (0.3nm)/Pt (0.7nm)] ×N 多層膜(N = 3, 4, 5)においてレーザー光で磁区パターンを作成し、電流を流しながら試料表面の温度変化をロックインサーモグラフィ法により測定することで、光でデザインした磁化分布に対応したさまざまな温度変化パターンが発生することが示されている。この熱流分布の能動的制御において加熱・冷却能を大幅に向上させることができれば、スピントロニクスデバイスにおける熱制御に利用できる可能性がある。

(岩手大学 三浦健司)