【分野】磁性材料

【タイトル】Sm2Fe17N3粉末の高保磁力化に成功

【出典】
粉体粉末冶金協会2019年度秋季大会概要集,3-8A「保磁力30kOe超を有するSm2Fe17N3微粉末の開発」(産業技術総合研究所)岡田周祐、能出英里、高木健太、(TDK)橋本龍司、榎戸靖
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2019/pr20191021/pr20191021.html

【概要】
国立研究開発法人産業技術総合研究所の磁性粉末冶金研究センター[1]はTDK株式会社と共同で、室温の保磁力が約32kOe、200℃の保磁力が約11kOeのSm2Fe17N3磁石粉末を開発した。

【本文】
ネオジム磁石と同等のポテンシャルをもつSm2Fe17N3磁石は、ネオジム磁石のように重希土類によって保磁力を向上させることができないため、Znコーティングによる粉末表面改質や結晶粒の微細化によって高保磁力化させる検討が進められている。Znコーティングでは磁化の低下が生じるが、結晶粒の微細化は磁化の低下なく保磁力を向上できる利点がある。粉末を微細化する手法としては、粉砕法より微細化できるボトムアップ手法として酸化物原料をカルシウム還元させる手法が有効であるが、高温下で使用される自動車主機モータで要求される保磁力までは得られていなかった。
産業技術総合研究所の岡田らはこれまで、粒径の微細化[1-2]や最終工程のカルシウム除去時の保磁力低下を抑制する技術を開発し、保磁力を向上させてきたが[3]、酸化物原料とカルシウムを混合したのち加熱するため、還元が不均一になって保磁力低下要因となるSmリッチ凝集粒子が生成してしまうという課題があった。今回、回転撹拌機構を備えた熱処理装置を独自に開発することにより還元反応の均一性が向上、Smリッチ凝集粒子の生成が抑制され、従来と同じ粒径でも室温で約32kOe、200℃でも約11kOeという高い保磁力を有するSm2Fe17N3磁石粉末を得ることに成功した。
保磁力向上によって自動車主機モータ等の高温での使用も視野に入るため、さらなる用途展開が期待される。また磁性粉末冶金研究センターでは、Sm2Fe17N3磁石の高密度バルク化も検討されており、高い磁化も兼ね備えた高性能Sm2Fe17N3磁石開発が期待される。

[1]磁性粉末冶金研究センター ハード磁性材料チーム
https://unit.aist.go.jp/magmet/hdmm/index.html
[2] S. Okada, et.al, J. Alloys Compd. 663, 872 (2016).
[3] S. Okada, et.al, J. Alloys Compd. 695, 1617 (2017).
[4] S. Okada, et.al, J. Alloys Compd. 804, 237 (2019).

(大同特殊鋼株式会社 宇根康裕)