【分野】磁気物理

【タイトル】カイラル磁性薄膜におけるスキルミオンの液晶構造

【出典】
T. Nagase, M. Komatsu, Y. G. So, T. Ishida, H. Yoshida, Y. Kawaguchi, Y. Tanaka, K. Saitoh, N. Ikarashi, M. Kuwahara, and M. Nagao
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.123.137203
新機能素子の実現が期待される“磁気渦粒子”磁気スキルミオンで、新たな構造を実現(名古屋大学プレスリリース、2019年10月2日)
http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20191002_engg1.pdf

【概要】
Co8.5Zn7.5Mn4薄膜試料(厚さ100nm)の磁気構造を、ローレンツ電子顕微鏡により測定した。その結果、特定の方向に伸びた形状のスキルミオンが観測された。この構造を解析すると、スメクティック液晶と呼ばれる種類の液晶に類似した状態であることが確認された。このスキルミオン液晶の発現は、磁気異方性とナノ構造効果が薄膜内部で協奏的に働いた結果であり、新たなトポロジカル磁気構造体の発見につながることが期待される。

【本文】
名古屋大学大学院工学研究科の長瀬知輝(博士前期課程)、同大学未来材料・システム研究所未来エレクトロニクス集積研究センターの長尾全寛准教授らの研究グループは、磁気スキルミオンが液晶状態となる、新しい構造の実現に成功した。
磁気スキルミオンは、カイラル磁性体などの空間反転対称性が破れた磁性体で現れる磁気構造の一つである。多くの場合、六方格子を組んだ状態となるが、最近では正方格子やアモルファス状態などのスキルミオン格子が報告されており、固体中の原子配列に似た状態を形成することが知られている。
研究グループは、磁気スキルミオン物質のナノ構造効果と磁気異方性に着目し、厚さ100nmまで薄くしたCo8.5Zn7.5Mn4薄膜試料を作製した。磁気スキルミオン物質は試料表面効果により、表面からある程度の深さまで磁気構造が変化していることが知られている。厚さ100nmの薄膜試料では、この効果が薄膜全体に及んでいる。またこの試料は、互いに直交した大きさの等しい3軸の磁気異方性を持っている。この磁気異方性の方向を1つは薄膜面に平行に、残り2つを薄膜面垂直から45度傾いた方向に設定することで、薄膜面に対して磁気構造が異方的になるような試料を作製した。研究グループは、この薄膜試料に対し、ローレンツ電子顕微鏡を用いて観察をおこなった。その結果、特定の方向に伸びた形状の磁気スキルミオンが観測された。このスキルミオンの配置をフーリエ変換とドロネー三角分割法という方法で解析した結果、スメクティック液晶と呼ばれる種類の液晶に類似した状態であることが明らかとなった。
このスキルミオン液晶の発現は、磁気異方性とナノ構造効果が薄膜内部で協奏的に働いた結果であり、新たなトポロジカル磁気構造体の発見や、新しい動作原理を持つ省エネルギーの次世代スピンデバイスの実現につながることが期待される。
本成果は、2019年9月27日に、米国物理系学術誌Physical Review Lettersから出版された。(Phys.Rev.Lett.123.137203 (2019))

(沼津高専 大澤友克)