磁性分野におけるマテリアルズインフォマティクスの現状

日 時:
2019年5月21日(火)13:00~16:40

場 所:
中央大学駿河台記念館
参加者:
28名

 今回の研究会では、機械学習、データ科学、データ生成、シミュレーションなどをキーワードとし、磁性材料の特性評価および新規磁性材料探索についてご講演いただいた。 多数の方にご来場いただき、活発な議論が交わされた。

  1. 「トポロジカル機械学習手法の磁性材料課題への展開」
    ○小嗣真人(東京理科大)

     迷路状磁区構造を対象に、パーシステントホモロジーを用いて保磁力の寄与因子を自動的に可視化することを試みた。 パーシステントホモロジーは形の特徴を抽出することができ、磁区構造における平衡相および非平衡相の分類に有用である。 実験ではRIGガーネットにおける迷路状磁区構造に対して、パーシステントホモロジーを適用した。得られた特徴量を元に、多変量解析を実施し、保磁力に寄与する因子の可視化について示された。

  2. 「マイクロマグネティクス、データ科学的手法による磁区解析」
    ○三俣千春(物材機構)

    磁気共鳴などに関し、LLG方程式を用いて計算する方法について、仮想スクリーニングの手法を取り入れた計算の高速化について検討した結果が報告された。 その結果,多項式関数などの連続関数によって磁化分布をフィッティングした記述子を用いて、磁場依存性を最適化した模型が構築でき、精度よく共鳴磁場を予測できることが明らかになった。導入した記述子は、磁化分布の予測にも利用可能であり、縮約された少数のパラメータセットによる計算の効率化が可能なことが示された。

  3. 「磁石材料の実験・シミュレーションデータ生成、データ科学を活用した解析」
    ○小野寛太(KEK)

     マテリアルズインフォマティクス(MI)の発展に伴い、材料創製および機能評価・解析の効率化、自動化や高精度化が進んでいる。 MI手法を用いた,計測および計測データ解析の最適化・自動化・高速化に関する研究の最近の進展について報告が行われた。 計測・解析における人間の労力が著しく減るとともに、これまで専門家しか出来なかった磁性材料の計測が誰にでも可能になることが期待される。

  4. 「第一原理計算と機械学習を組み合わせた,物性を原子配列で整理・理解するためのデータ科学的手法の構築」
    ○中村浩次(三重大)

     第一原理計算で得られたデータと機械学習を組み合わせ、データ科学的手法からみた金属多層膜の磁気的性質と原子層配列依存性をMgO(001)上のCo-Fe多層膜を題材に発表された。 例えば,磁化の大きさは薄膜においてもスレーター・ポーリング関係が満たされるように原子組成で整理され、他方、結晶磁気異方性エネルギーは原子層配列に強く依存し、界面垂直磁化を導く界面近傍の原子層配列の効果が見られることが示された。

  5. 「機械学習に基づいた磁気トンネル接合電極材料の探索」
    ○白井正文(東北大)

     室温で高い磁気抵抗比を示す磁気トンネル接合を実現するため、第一原理計算と機械学習を併用して高キュリー温度を有する四元ホイスラー合金を探索した。 合金構成元素の価電子数など簡便に入手可能な記述子を機械学習に用いたにもかかわらず、比較的高い精度で効率よく所望の材料を探索できることが示された。 機械学習による材料探索の精度向上のためには、記述子の吟味が課題であることが指摘された。

文責:近藤浩太(理研)、山本真平(三恵技研)