第222回研究会/第2回磁気センサ専門研究会

TMR磁気センサの製品応用に向けた開発と次世代磁気検出技術の進展

日 時:
2019年3月18日(月)13:00~16:20

場 所:
中央大学駿河台記念館
参加者:
38名

 強磁性トンネル接合を用いたTMR磁気センサの製品応用に向けた研究開発が、センサ感度の飛躍的な向上を背景として急速に進んでいる。本研究会の前半では、TMR磁気センサの様々なアプリケーションとその開発状況について、企業からの招待講演者の方々に紹介いただいた。後半は、新しい高感度磁気検出技術について、3件の招待講演をいただいた。磁気光学効果、表面プラズモン、および、スピン波を利用した磁気検出技術は、将来的に高感度な磁気センサ素子に応用展開が可能と考えられる。研究会には30名を超える研究者、技術者が参加し、非常に活発な議論がなされた。

  1. 「車載用TMR磁気センサの開発」
    ○吉村政洋1、 古市喬干1、 阿部竜一郎1、 与倉久則1、 巻田真宏1
    大兼幹彦2、 角田匡清2、 薬師寺 啓3、 福島章雄3、 久保田 均3
    湯浅新治3、 安藤康夫2、 中山喜明11デンソー、2東北大、 3産総研)

     電気自動車の普及に伴い、バッテリやインバータの電流を精密に測定可能な高感度磁気センサの実現が求められている。TMR磁気センサは、高感度・小型・低消費電力、かつ、温度特性に優れているが、車載用電流検出素子としては、ダイナミックレンジと出力の直線性に課題があった。本報告では、垂直磁化膜材料を用いることで、広いダイナミックレンジと、非常に高い線形性を示すTMR磁気センサの紹介がなされた。今後、ホール素子に代わる、車載用電流検出素子として製品化が期待される。

  2. 「TMR効果を利用した高感度ひずみ検知素子とそのMEMSマイクロフォン応用」
    ○藤 慶彦、 東 祥弘、 岡本和晃、 馬場祥太郎、 増西 桂、 永田友彦、
    加治志織、 湯澤亜希子、 小野富男、 原 通子(東芝)

    スピントロニクス技術を用いることで、従来の金属歪ゲージやピエゾ抵抗効果素子とは異なる、新しい高感度ひずみ検知素子が実現可能である。具体的には、TMR素子の検知層に磁歪材料を用い、検知層にひずみが加わることによる磁化の変化を、磁気抵抗効果として検出できる。講演では、高い磁歪定数を有する軟磁性アモルファスCo-Fe-BまたはFe-B磁性材料の開発により、Siピエゾ抵抗素子よりも1桁以上も高いひずみ検出感度を達成したことが報告された。また、MEMSマイクロフォンへの応用に関しても紹介がなされた。

  3. 「ファラデー効果を利用した高周波磁界計測」
    ○石山和志(東北大)

     近年の集積回路等の電磁耐性の低下による誤動作防止のために、漏洩電磁波の発生源を正確に特定するための高周波磁界プローブの実現が求められている。従来の金属製プローブでは、本来の磁界分布を乱してしまう課題があったが、考案されたプローブでは、ガーネットのファラデー効果を利用することで、低侵襲で高周波磁界が測定可能であることが示された。また、波形計測のためにパルスレーザを用い、感度を高めるためにバースト変調を利用することが有効であることが報告された。

  4. 「表面プラズモンを用いた磁気検出」
    ○芦澤好人、 中川活二(日大)

     磁気表面プラズモン効果は、外部磁界により表面プラズモンの励起条件が変化する現象であり、新しい外部磁界の検出手法として応用可能である。講演では、磁気表面プラズモン効果を大きくするためには、表面プラズモン材料と強磁性体材料との組み合わせ、および、適切な波長の選択が重要であることが示された。また、磁気センサ素子としての応用に向けて、光ファイバ型の表面プラズモンセンサ素子の研究開発状況についても紹介がなされた。

  5. 「スピン波を用いた磁界計測」
    ○後藤太一(豊橋技科大)

     最近、磁気モーメントの歳差運動の位相差に起因するスピン波を利用して、様々なスピントロニクス素子に応用するための研究が活発に行われている。スピン波を用いた磁気センサ素子は、室温かつGHz帯で動作し、外部磁界に対して敏感に応答する。講演では、スピン波の波動としての性質を利用して、位相干渉を構造によって制御することで感度向上が可能であることが示された。また、スピン波の分散関係を制御することで、温度安定性が改善することも報告された。

文責:大兼幹彦(東北大)


 

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