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【分野】 磁気応用

【タイトル】磁気抵抗センサのノイズを低減する新規交流変調方式

【出典】白鳥ら「偶関数GMRと逆位相ブリッジを用いた超高感度磁界センサ」日本磁気学会第44回学術講演会 講演番号:14aD-2
Symmetric Response Magnetoresistance Sensor With Low 1/f Noise by Using an Antiphase AC Modulation Bridge, Shirotori et al. IEEE Trans. Magn. (2020).
https://doi.org/10.1109/TMAG.2020.3012655

【概要】東芝は巨大磁気抵抗(GMR)センサにおいて、1/fノイズを実効的に低減する交流変調ブリッジセンサを開発し、45 pTの磁界分解能を実証した。

【本文】
心磁や脳磁など生体磁気信号はpT(ピコテスラ)の大きさであり、小型で室温動作する磁気抵抗センサを用いて測定することが、磁気センサ開発の目標の一つである。生体が発生する交流磁界の周波数は1から100 Hz程度と低周波であり、そのような帯域では、巨大磁気抵抗およびトンネル磁気抵抗センサでは1/fノイズが大きいことが、pT磁界分解能を達成する妨げである。
磁気抵抗センサに交流参照磁界を印加して、センサの動作周波数をkHz程度に変調することにより、1/fノイズを実効的に低減する方法が以前より提案されているが、最近東芝では新規な交流変調方式を開発した。
従来の方式は、図(a) のようにゼロ磁界付近で線形な、奇関数型の抵抗-磁界特性を示すセンサに対し、交流変調磁界を印加するものである。この場合、センサの出力電圧において、巨大な変調信号のサイドバンドに低周波の測定磁界の信号が現れる。そのため、測定磁界の信号が変調信号に埋もれる、またはアンプのダイナミックレンジが飽和する問題があった。新方式では、図(b) のように、偶関数型の抵抗-磁界特性を示すセンサに対し、交流変調磁界を印加する。この場合、センサの出力信号において、変調磁界の2倍の周波数 (2f) に変調信号が現れ、測定磁界による信号は1f周辺に現れる。また、図(c)のように交流変調磁界を印可するための電流方向を変えて、ブリッジ内のGMRに対して逆位相の交流変調磁界を与える。この逆位相ブリッジ用いると、変調信号をキャンセルすることができることが示された。
この交流変調を用いたブリッジセンサに対し、磁束収束板を組み合わせることで、45 pTの磁界分解能が実証された。

(物質・材料研究機構 中谷友也)

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