[分野] 磁気応用
[タイトル] 脳磁図計測による早期アルツハイマー病診断の試み
[出典]
Yoshihisa Ikeda, Mitsuru Kikuchi, Moeko Noguchi-Shinohara, Kazuo Iwasa, Masafumi Kameya, Tetsu Hirosawa, Mitsuhiro Yoshita, Kenjiro Ono, Miharu Samuraki-Yokohama, and Masahito Yamada, Scientific Reports (2020) 10:9132, https://doi.org/10.1038/s41598-020-66034-5
Spontaneous MEG activity of the cerebral cortex during eyes closed and open discriminates Alzheimer’s disease from cognitively normal older adults
[概要]
金沢大学の池田らは、早期アルツハイマー患者と認知機能正常者の安静状態における閉眼・開眼時の自発脳磁図が、早期アルツハイマー病の判別に有効であることを明らかにした。
[本文]
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)の最も重要なリスク因子は加齢であり、早期診断のためには多くの人を素早く簡単に調べる方法が必要である。脳磁図(Magnetoencephalography:MEG)は非接触・非侵襲で計測が可能であるため被験者の負担が少なく、より簡便に脳機能計測が可能な方法として期待されている。
金沢大学大学院医薬保健学総合研究科の池田らは早期AD患者20名と認知機能正常被験者(cognitively normal group:NC)27名を対象に安静時の閉眼、開眼状態における脳磁図の計測し、MEG計測が早期ADの判別に有用であることを明らかにした。閉眼および開眼時に記録されたMEG信号を五つの周波数帯域(1: 4 ~ 6 Hz、2 : 6 ~ 8 Hz, 1: 8 ~ 10 Hz, 2: 10 ~ 13 Hz, : 13 ~ 20 Hz)に分け、個別頭部モデルを用いて信号源を推定した。大脳皮質を68の領域に分割し、閉眼および開眼時の推定活動電流の絶対値強度((1)と(2))、閉眼時および開眼時の推定活動電流の正規化された強度((3)と(4))、各差分値((5)=(1)-(2), (6)=(3)-(4))の六つの評価量を設け、各評価量におけるAD患者と正常健常者の信号源強度の差異を周波数帯域毎にマッピングした。(1)の閉眼時の絶対値強度の比較では右縁上回領域で1帯域の活動がAD患者の方が正常被験者より大きくなる等の結果が得られた。また、被験者一人あたりから得られる計2040のパラメータからSVM(Support vector machine)アルゴリズムを利用して算出したROC (Receiver Operating Characteristic) 曲線から、早期ADと認知機能正常の判別率83 % が得られた。本研究の成果は2020年6月4日、Scientific Reportsに公開された。
脳磁図計測は有効なアルツハイマー病の早期検出の有効なツールの一つになると期待される。

(金沢工業大学 小山大介)