【分野】磁性材料

【タイトル】磁気コンプトン散乱を用いて測定したスピン選択磁化曲線の深さ依存性

【出典】
Naruki Tsuji, Hiroshi Sakurai, Yoshiharu Sakurai, Apl. Phys. Lett. 116, 182402 (2020); doi: 10.1063/5.0007398
Depth dependence of spin-specific magnetization hysteresis loops measured by magnetic Compton scattering

【概要】
磁気コンプトン散乱を用いて、Nd-Fe-B焼結磁石のスピン選択磁化曲線の磁石表面からの深さ依存性を測定した。その結果、表面劣化層は120μm程度であり、保磁力が減少していた。さらに、磁石の中心付近においても保磁力の減少があった。これは反磁界の効果と考えられる。

【本文】
 高輝度光科学研究センターの辻成希研究員らは、磁気コンプトン散乱を用いて、Nd-Fe-B焼結磁石の磁化曲線の磁石表面からの深さ依存性を測定した。
 Nd-Fe-B焼結磁石は直径5-10μm程度の結晶粒から構成されており、切断や研磨による表面損傷は磁区発生が起こりやすくなり、保磁力や角型比などの磁気特性を悪くする。しかしながら、切断や研磨などの表面損傷がどの程度の深さまで影響を与えるのか、必ずしも明らかではない。また、磁石内部の実験的保磁力分布も明らかではない。
 辻研究員らは、c軸を容易軸とするNi-Cu-NiコートしたNd2Fe14B(大きさ2×2×4 mm)を対象として、SPring-8-BL08Wで得られる182 keV円偏光X線を用いた磁気コンプトン散乱を測定し、スピン選択磁化曲線の表面からの深さ依存性を測定した。
 その結果、表面より120μmより表面側で保磁力および角型比が減少しており、最表面では保磁力1.2 T(材料の平均1.52 T)、角型比0.8(磁石内部の角型比0.95)であった。一方、保磁力は磁石内部においても減少しており、磁石中心付近で1.5 Tとなる一方、表面劣化層に隣接する領域で1.7 Tで最大となった。これは、反磁界の効果と考えられる。なお、角型比は磁石内部で0.95で一定であった。

(群馬大学 櫻井浩)