156.01

【分野】磁気物理
【タイトル】”Observation of topological superconductivity on the surface of iron-based superconductor”

【出典】:
・Peng Zhang, Koichiro Yaji, Takahiro Hashimoto, Yuichi Ota, Takeshi Kondo, Kozo Okazaki, Zhijun Wang, Jinsheng Wen, G. D. Gu, Hong Ding, and Shik Shin, 10.1126/science.aan4596 (2018)
・http://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/news2.html?pid=4680

【概要】
東京大学物性研究所のグループは、FeSe0.5Te0.5化合物の最表面を超高分解能レーザー角度分解光電子分光により観測し、トポロジカル状態の証拠の1つであるディラックコーンの直接観測に成功した。

【本文】
東京大学物性研究所のPeng Zhang特任研究員、辛埴教授らの研究グループは、高温超伝導体の1種として、広く知られている鉄系超伝導体FeSe0.5Te0.5の最表面を、超高分解能レーザー角度分解光電子分光装置を用いて調べ、トポロジカル状態の証拠の1つであるディラックコーンを発見した。また、詳細な実験により、このディラックコーンで示される電子バンドがスピン偏極していることを明らかにし、鉄系超伝導体FeSe0.5Te0.5がトポロジカル物質であることを確認した。更に、超伝導ギャップの直接観測により、超伝導転移温度が15 Kであることも確認した。
これまでも、鉄系超伝導体の電子状態直接観測の研究が盛んになされてきたが、分解能不足のため、トポロジカル超伝導体の証拠発見には至っていなかった。本研究では、長年開発されてきた超高分解能レーザー角度分解光電子分光装置を用いることによって、トポロジカル超伝導体である証拠を直接観測することに初めて成功した。
トポロジカル超伝導体には、素粒子物理学で未発見のマヨラナ粒子が存在する可能性が理論的に指摘されている。本成果によって、そのマヨラナ粒子を発見することが技術的に可能であることが示された。マヨラナ粒子は量子コンピューターへの応用も期待されており、現在実用化されている量子コンピューターは 0.015 K で量子状態を作り出しているが、本研究成果によって 15 K でも動作可能になることが示された。またマヨラナ粒子は安定しているため、擾乱に強い全く新しい量子コンピューターの開発が進むものと期待される。

東北大・金属材料研究所 梅津理恵

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