分野:
磁性材料
タイトル:
ロシアにおける希土類磁石
出典:
2007BM国際シンポジウム講演要旨
 
 
概要:
 2007年12月7日に東京都内で開催された日本ボンド磁性材料協会主催の「2007BM国際シンポジウム」において、ウラル州立大学のニコライ・クズレバチョフ(Nikolay Kudrevatykh)学長が講演し、ロシアの希土類資源および希土類磁石生産の現状について紹介した。
 
 
本文:
 Kudrevatykh教授によれば、旧ソビエト連邦においては希土類産業は良く発達し国内および輸出需要を満たしていた。ロシア、カザフスタン、キルギスタンの各領土に存在する3つ希土類鉱床がその希土類元素供給源であった。ロシアはその旧ソ連希土類産業の主たる継承国であるが、現在はこれら3つの鉱床のうちロシアに存在し主としてセリウム群の希土類元素を含む最大規模のLovozerskoye鉱床だけが生産を続けている。他の2つは、規模は小さいが旧ソ連においては重要なイットリウム群の希土類元素資源であった。ロシアにおける希土類酸化物の最大の鉱床は東北部のYakutiaにあるTomtorskoye鉱床であるが、未開発である。

 ロシアにおける希土類磁石の生産は年間生産重量10~100トンの小規模企業により担われているが、その設備が充分近代化されておらず、製品の性能は海外の標準と比較して高いとは言えない。近年、ロシア企業による希土類磁石の消費が増加しているが、その需要は主として中国およびヨーロッパからの輸入により満たされている。

 ロシアにおける希土類磁石の研究開発は90年代の経済危機を乗り越えた州立モスクワ鉄鋼研究所(MISA), All-Russia Institute of Inorganic Materials, Giredmet Federal State Unitary Enterprise, Institute of Metals Physics, the Ural Branch of the Russian Academy of Sciences, All-Union Air Craft Materials Insitute, Ufa State Air Craft Technical University, the Urals State Universityなどの研究機関によって継続され、近年、再度活発化して研究成果をあげている。例として、回転アトマイズ法による液滴化とコーン状回転急冷板とを組み合わせた超急冷装置、磁気選鉱機、磁気式水フィルター、油井用の磁気式デワクサーなどが紹介された。

 旧ソビエト連邦の崩壊が希土類産業に打撃を与えた傷痕の深刻さを見た感があったが、ロシアの希土類産業が今後順調な発展を遂げて、重要な資源供給源となることを期待したい。

(日立金属(株) 磁性材料研究所 広沢 哲)