分野:
ハード磁性材料
タイトル:
マグネティックス研究会「永久磁石とその応用」開催される~Nd-Fe-B磁石の200℃1万時間の経時変化など
概要:
 11月28日午後に日本電気検定所において電気学会主催、(社)紛体粉末冶金協会硬質磁性材料委員会の共催、電気学会「高性能永久磁石材料とその応用」調査専門委員会の協賛で、マグネティックス研究会「永久磁石とその応用」が開催され、11件の研究成果が発表された。Sm-Fe-Ti系高保磁力材料、Nd-Fe-B系焼結磁石の200℃、10000時間までの磁束経時変化測定結果など、興味深い発表があった。
本文:
 信越化学の大橋らは、HEVや風力発電用モータへの応用拡大が期待されているNd-Fe-B系焼結磁石の長期信頼性について報告した。これらの用途には10~20年(100,000時間)の信頼性が求められるが、従来はNd-Fe-B焼結磁石の長期経時変化は1,000時間までの試験結果をネール則に従い外挿するのが一般的。報告者らは10,000時間までの経時変化を測定してこの外挿が正しいかを検証した。試験した試料はHcJ=1.2~2.4 MA/m、パーミアンス係数 2.0~0.5で、測定温度範囲は100~200℃。加熱に伴う初期の不可逆熱減磁率は磁石の保磁力に依存し高保磁力材ほど小さくなる。長期間の磁束密度の経時変化率を大雑把に見れば、10000時間までネール側の直線性が近似的に成立し、さらに1ディケード外挿し10万時間での減磁率を予測することは安全と見なせる。初期減磁率が大きい状況は実使用状態では使用しないが、低パーミアンス係数で高温保持により初期減磁が数パーセント以上ある場合では、縦軸を拡大すれば磁束経時変化は直線でなく、上に凸の曲線となっていることが示され、高保磁力磁石の磁気余効メカニズムに関して議論が展開された。

 千葉工業大学の齋藤哲治はSm-Fe-Ti合金をメルトスピニング法によりSm-Fe系準安定合金であるSm3Fe29化合物およびSm5Fe17化合物を超急冷により作製。Sm3(Fe,Ti)29化合物は保磁力がほとんど発現しなかったが、Sm5Fe17化合物は600℃熱処理後にHcJ=22 kOeの高保磁力を発現(Br=0.4 T、減磁曲線にクニック存在)。XRDの結果からSm5Fe17相に少量のSmFe12相が含まれ、Sm5Fe17+SmFe12の混相系で最大37 kOeの高保磁力が発現したと述べた。

 NEOMAXの槙らは原点付近を通るマイナーループのリコイル透磁率を結晶方位のモデル分布関数と印加磁界の余弦成分が大きな結晶粒から磁化反転が進むとするモデルを用いて解析し、配向度を評価できることを示した。また、同社の西内らはNd-Fe-B系合金の水素不均化再結合(HDDR)プロセスにアイソサーマル水素化処理を適用し、Dyを添加した場合でも平衡水素化圧力を適正化する組成設計により、従来の処理方法では得られなかったBr>1 TでHcJが1700 kA/mを超える高保磁力の異方性磁紛が得られることを示した。

 その他の発表においても熱心な討議が繰り広げられた。

株式会社NEOMAX 磁性材料研究所 広沢 哲