日時:2014年5月23日(金) 13:30~16:45
場所:中央大学駿河台記念館
参加者:17名

 今回のナノマグネティックス研究会では、スピン流の生成/制御による磁壁移動現象とその解析、金属クラスターにおける磁性の評価、及び、Mn系垂直磁化新合金開発と磁気特性向上に関する学術的な研究成果の講演と、一方で、最新型量産用成膜装置で成膜されたMTJにおける実用的なデータの報告があった。いずれも最新のデータに基づく講演であった。また、発表テーマは基礎的な物理現象から実用的な材料特性まで幅広い範囲にわたっていたが、意外なところで関連する点も多く、お互いに刺激を与え合い、活発な議論を行うことができた。

  1. 「磁性ナノヘテロ構造におけるスピン軌道効果と磁化制御技術への展開」

    〇林 将光 (物材機構)

    本講演では、極薄の強磁性層をスピン軌道相互作用が大きい重金属層と、酸化物層などで挟んだ非対称積層構造における電流駆動磁壁移動現象について紹介した。膜面水平方向に電流を印加し、重金属層のスピンホール効果によって生成されたスピン流が強磁性層に進入し、磁化にスピントルクが作用した際の磁壁の応答について、そのモデルと実験結果との比較を行った。また、このようなスピン流によって磁壁を駆動するためには、界面で異方性交換相互作用が必要であり、その大きさや符合が積層構造で制御できることを示した。

  2. 「真空中に孤立した金属クラスターの磁性に現れるサイズ効果:X線磁気円二色性分光と磁気光学分光」

    ○寺嵜 亨 (九州大)

    数個から十数個の金属原子の微小集合体である金属クラスターについて、究極のナノスケール物質としての特徴を、特に磁性に着目して解説した。磁気モーメントの測定方法を詳しく述べた後、構成原子数に依存して原子の配置構造が微妙に変化し、スピン結合に異常が現れる鉄やクロムのクラスターについて、研究成果を紹介した。

  3. 「磁気トンネル接合の成膜技術の進展」

    〇恒川 孝二 (キヤノンアネルバ)

    磁気トンネル接合(MTJ)に関し、磁気ヘッド、磁気センサー、MRAMのアプリケーションごとに異なる膜特性および成膜装置への要求仕様を解説した後、実際に量産用成膜装置で成膜した各MTJの膜特性について最近のデータをいくつか紹介した。STT-
    MRAMで注目されている垂直MTJについては、Top-pin typeで200%を超えるMR比が紹介された。

  4. 「Mn系垂直磁化薄膜-磁性、磁気緩和、およびトンネル接合-」

    〇水上 成美 (東北大)

    本講演では、ギガビット級磁気メモリ用材料である正方晶マンガン系垂直磁化薄膜に関する研究について紹介した。まず、従来的な垂直磁化薄膜の磁気緩和とマンガン系材料の示す特異な磁気緩和の比較・議論を行った。次に、界面層を用いた垂直磁化MnGaトンネル接合の最近の進展について述べ、現状トンネル磁気抵抗効果(TMR)が室温で60%程度であり、これを増大させることが今後の課題であることを示した。最後に、Mn3Geがメモリ用材料として理想的な特性を有することを理論的に示し、その最近の実験結果について述べた。

文責:粟野博之(豊田工大)、細見政功(ソニー)