第229回研究会

テラヘルツ領域におけるスピントロニクス研究の現状と展望

日 時:
2020年11月11日(水)13:00 ~ 16:40

場 所:
オンライン開催
参加者:
45名

 今回の研究会では,近年注目を集めている反強磁性材料やトポロジカル材料におけるテラヘルツ領域のスピンダイナミクスの観測手法や光学応答に関する最新の研究成果についてご講演頂いた.多数の方にご来場いただき,活発な議論が交わされた.

  1. 「ワイル反強磁性体Mn3Snの室温テラヘルツ異常ホール効果」
    ○松永隆佑(東大)

     反強磁性金属Mn3Snに対するテラヘルツ周波数帯の異常ホール効果の観測により,強磁性並みに大きなホール伝導がテラヘルツ周波数帯で無散逸に生じることを実験的に明らかにした研究成果について議論がなされた.また,近年のテラヘルツの研究技術と反強磁性制御に関する研究動向についても紹介された.

  2. 「反強磁性体磁化ダイナミクスのTHzスペクトロスコピー」
    ○森山貴広(京大)

     THz分光を用いて反強磁性磁化ダイナミクスを調査した最近の研究結果について紹介された.絶縁性反強磁性体NiOにおいて,反強磁性共鳴スペクトルからのダンピング定数解析,スピンポンピング効果に関わるスピンミキシングコンダクタンスの評価,カチオンドーピングによる反強磁性共鳴の制御について議論がなされた.

  3. 「光パルスで観る磁性金属のテラヘルツスピンダイナミクスとスピン流」
    ○水上成美(東北大)

     パルスレーザーを用いたTHz帯のフェリ磁性磁化ダイナミクスの観測とその磁気抵抗デバイス応用について紹介された.また,磁性金属や非磁性金属にパルスレーザーを照射した際に発生するTHz帯のスピン流について議論され,それら研究の展望についても述べられた.

  4. 「Bi2Te3トポロジカル絶縁体薄膜におけるスピン偏極したディラック電子の磁気光学応答」
    ○溝口幸司(阪府大)

     電極のないトポロジカル絶縁体薄膜に対して,光パルスを用いたテラヘルツ波測定および磁気光学カー効果測定を行うことで,ディラック電子による光電流の特性について調べた研究を紹介された.測定結果から,ディラック電子の特性であるスピン-運動量ロッキングに従って,円偏光励起によってスピン偏極した光電流を生成できることが示された.

  5. 「半導体における電子スピン時空間ダイナミクス計測」
    ○森田 健(千葉大)

     光通信波長帯のスピン機能デバイスとして将来期待されているInGaAs半導体で,伝導電子スピンがどのように振る舞うのかについて超短パルスレーザーを用いた時空間ダイナミクス測定で明らかにした研究結果を紹介された.

  6. 文責:近藤浩太(理研), 植田研二(名大), 柴田竜雄(TDK)