第227回研究会/ 第67回化合物新磁性材料専門研究会

X線とレーザーの融合による磁性ダイナミクス

日 時:
2020年9月28日(月)13:30 ~ 18:00

場 所:
オンライン開催
参加者:
20名

 最近の物性物理学では,物質の静的な電子状態や磁気構造だけでなく,その非平衡・過渡状態における動的な性質が注目されている.その背景には,フェムト秒の領域を観測できる超短パルスレーザーやX線自由電子レーザーなどの実験手法の急速な発展があり,磁性体のスピンダイナミクス研究などで各分野間での連携が強く望まれている.本研究会では,X線,レーザー,理論などの立場から研究の最前線を6名の講師の方々に紹介いただいた.

  1. 「SPring-8 BL07LSUとSACLAを用いた光誘起磁気ダイナミクスの時間分解測定」
    ○山本航平(分子研)

     光によって引き起こされる磁性のダイナミクスを元素選択的に観測するために最近開発された,X線自由電子レーザーを利用した硬X線の磁気円二色性,極端紫外域の共鳴磁気光学カー効果の時間分解測定手法を紹介され,それらの強磁性合金薄膜への適用例を述べられた.

  2. 「量子井戸状態により発現するPd, Pt超薄膜の強磁性とその制御」
    ○高橋陽太郎(東大)

     Pd・Pt(100)超薄膜における量子井戸誘起強磁性の発現および,界面電子状態の制御や歪みの印加によりその磁性が変調されることを示された.また,超高速X線分光によりPd・Pt単体の磁気ダイナミクス計測が可能であることを紹介された.

  3. 「マルチフェロイクスにおけるテラヘルツ帯の電気磁気応答」
    ○櫻木俊輔(東大)

     マルチフェロイクスで観測される,電気磁気光学効果が著しく増強されるエレクトロマグノンと呼ばれるテラヘルツ(THz)帯のマグノン共鳴について解説された.また,対称性によって区別されるいくつかの電気磁気光学効果を紹介された.

  4. 「反強磁性体の超高速分光」
    ○佐藤琢哉(東工大)

     反強磁性と強誘電性を併せ持つBiFeO3のTHz帯におけるコヒーレントマグノンと光学フォノンとの励起および,これらの検出メカニズムについて報告された.BiFeO3のTHzマグノンとフォノンが,フェムト秒パルスを用いて逆コットン・ムートン効果を介して非熱的に励起されたことが示された.

  5. 「赤外光源を用いたコヒーレント軟X線パルス発生とフェムト秒吸収分光への応用」
    ○石井順久(量研)

     高強度赤外レーザー開発とそれを用いたアト秒軟X線光源発生について発表された後,アト秒軟X線光源を用いたチタンL吸収端の分光計測と窒素K吸収端における一酸化窒素の超高速分光について紹介された.

  6. 「レーザー駆動型のスピン秩序・スピントロニクス機能の制御方法の提案」
    ○佐藤正寛(茨城大)

     講演者らは,レーザー科学の発展を踏まえて,可視光からTHz帯レーザーを用いた固体磁性制御の理論研究を進めている.本講演では,最近の成果3つ「光渦による磁気欠陥の生成法」「THz波によるスピン流版太陽電池」「高強度THz波によるマグノンペアの検出法」について解説された.

文責:近松 彰(東大),和達大樹(兵県大)

 

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