「Mn系磁性材料の物性と応用」

日時:2006年10月18日(水)10:00~17:00
場所:化学会館 6階大会議室
参加者:32名

講演内容:

  1. 「巨大な電気磁気効果を示すMn酸化物」
    有馬孝尚(東北大)

     ぺロブスカイト型希土類マンガン酸化物RMnO3においてRがGd,Tb,Dyの場合に、巨大磁気抵抗効果が見出された。スピンフラストレーションが長周期磁気構造をもたらし、それが強誘電分極の発生と磁場に対する柔軟性の双方に寄与していることが示された。
     

  2. 「逆ペロブスカイト構造をもつMn窒化物」
    竹中康司(理研)

     逆ぺロブスカイト型マンガン窒化物Mn3XNの示す巨大なマイナス熱膨張を紹介し、背景にある磁気体積効果や熱膨張抑制材への応用を議論した。特に組成最適化による「単一物質ゼロ熱膨張材料」開発の試みが示された。
     

  3. 「磁気コンプトンプロファイル測定による電子・軌道状態の観測 – 層状Mn酸化物に焦点をあてて -」
    小泉 昭久(兵庫県立大)

     磁気コンプトンプロファイル(MCP)の特徴と実験について説明を行ない、具体例として、層状Mn酸化物を研究対象として行なったMCPのホール濃度依存性と二次元再構成実験を採り上げ、その結果として得られた電子・軌道状態について紹介された。
     

  4. 「Mn3Ir反強磁性合金による巨大交換バイアス」
    角田匡清1、三俣千春2、中村哲也3、高橋研11東北大、2日立金属、3JASRI/SPring-8)

     L12相を含むMn-Ir/Co-Fe積層膜で観測される巨大交換磁気異方性のメカニズム解明を目的として、軟X線MCDならびにマイクロマグネッティクスの手法を用いて行なった強磁性層磁化反転過程における反強磁性層のスピン構造変化に関する研究内容が報告された。
     

  5. 「(Ga,Mn)As・(In,Mn)Asにおける磁性の電界制御」
    千葉大地、松倉文礼、大野英男(東北大)

     (Ga,Mn)Asと(In,Mn)Asは正孔誘起強磁性体であり、転移温度は正孔濃度の関数となる。我々は外部電電界で正孔濃度を増減し、実際に転移温度や保磁力を制御することに成功した研究が報告された。
     

  6. 「Mn酸化物でのトンネル磁気抵抗素子」
    石井裕司1,2、山田浩之1,2、佐藤弘1,2、赤穗博司1,2、川崎雅司1,3、十倉好紀1,41産総研・2CREST-JST、3東北大金研、4東大)

     (La,Sr)MnO3(LSMO)を用いたスピントンネル接合では、その高いスピン分極率により、巨大TMR比が期待できる。LSMO薄膜の平坦化法、保磁力制御法の開発や、LSMO /バリア界面での電荷移動に着目した界面磁性の最適化を行なうことで、接合特性の向上やTMR比の増大効果が得られることを示した。
     

  7. 「Mn系分子磁石の理論解析」
    草部浩一(阪大)

     Mn分子磁石に着目し、特に[Mn(hfac)2NITPh]6がフラストレート効果を持つフェリ磁性ナノリングあることを理論的に示した。この結果に基づき、特異な磁性をもつ分子設計を行なった結果が報告された。
     

  8. 「単一分子磁石の合理的合成法」
    大塩寛紀(筑波大)

     単分子磁石はブロッキング温度以下で磁化の反転が凍結され超常磁性を示す。金属イオンの磁気的軌道と磁気異方性を考慮した単分子磁石の合理的合成法および量子スピンダイナミクスを含む単分子磁性について紹介された。
     

 今回研究会はMnをキーワードに、磁性材料としての可能性を、物質合成から理論と実験にわたる広範囲での研究御講演を頂き、今後のMn化合物、Mn合金、Mn分子などの、応用材料としての物性と可能性について活発な議論が交わされた。今後のMn磁性材料としての展望が開ける有意義な研究会であった。

(産総研 川中浩史)