「希土類磁石の最新動向とその応用」

日時:2006年3月14日(火)10:00~16:30
場所:機械振興会館
参加者:68名

講演内容:

  1. 「高性能Nd-Fe-B焼結磁石の最新動向」
    森本英幸(NEOMAX)

     Nd-Fe-B焼結磁石の高性能化の手法を中心に,リサイクルや表面処理技術など幅広くその最新技術が紹介された.近年はHDD用VCMを抜いてモータ用途が最も多い生産量となっていることや,高残留磁束密度化技術として酸素量を低減させ傾斜パルス磁界中成型することで最大エネルギー積が世界記録を更新したことが示された.また、高保磁力化技術としてはDy添加の他にMoやVの添加が有効であることも示された.希土類資源の問題に対してはリサイクルが重要であり、NEOMAXでの高いリサイクル率が紹介された.磁石の信頼性の向上には表面処理が不可欠であり,中でもアルミコーティングはモータ用途には好適であることが示された.
     

  2. 「希土類ボンド磁石およびラジアルリング磁石」
    入山恭彦(大同特殊鋼)

     希土類磁石材料における等方性希土類ボンド磁石の特徴と,Nd-Fe-B高特性射出成形磁石やSm-Fe-Nボンド磁石の磁気特性が紹介された.Nd-Fe-B系については樹脂の選定と磁粉配合率の増大によりエネルギー積が向上したこと,Sm-Fe-N系については高いエネルギー積だけでなく,耐食性が高いこと等が示された.さらに,ラジアル異方性リング磁石としては最高エネルギーを有する熱間加工Nd-Fe-B磁石(MQ3)の特徴と,組成の調整や製造技術の向上により更なる高エネルギー積化や微小磁石への適用が可能になったことと,それらの応用事例について示された.
     

  3. 「粒界拡散法により作製したNd-Fe-B系焼結磁石」
    中村 元(信越化学)

     磁石表面からDyを吸収・拡散させることで保磁力を増大させる新規のプロセスである粒界拡散法により作製したNd-Fe-B系焼結磁石の磁気特性と微細組織が紹介された.Dyは結晶粒界近傍にのみ濃化されているために,残留磁束密度の低下をほとんど伴わないことが示された.
     

  4. 「強磁場プロセスによるNd-Fe-B焼結磁石の高保磁力化」
    加藤宏朗(東北大)

     Nd-Fe-B焼結磁石の作製プロセスの最終段階である500℃付近での低温熱処理時に,最大14Tの強磁場を加えた場合の磁気特性の変化を系統的に調べた結果が紹介された.磁場中熱処理した試料では保磁力が最大37%上昇することが示された.保磁力上昇の起源について,主相と粒界相との界面における原子レベルでの格子整合関係と関連して考察された.
     

  5. 「風力発電の開発動向」
    安田 陽(関西大)

     希土類永久磁石を用いた動機発電機の応用の一つとしての風力発電機について,その技術動向が紹介された.大型風車の分野では主流になりつつある交流励磁巻線型誘導発電機と永久磁石方式動機発電機について比較しながら紹介された.小型風車の領域ではアキシャル型コアレス発電機が近年普及しつつあることが示された.風力発電機は他の風力発電構成要素と比較して,また既存のモータ技術と比較して,まだ成熟しておらず,今後飛躍的に発展する可能性を秘めた成長分野であることが指摘された.
     

  6. 「鉄道車両駆動用電動機の開発動向」
    松岡孝一(東芝)

     鉄道車両駆動用の電動機について,その方式と性能の変遷が詳細に紹介された.長い間直流電動機が用いられてきたが,パワーエレクトロニクス技術の進展により,保守が容易な誘導電動機が用いられるようになり,さらには,高効率の永久磁石同期電動機の開発が進められていることが紹介され,永久磁石同期電動機は高効率で小型軽量,高出力などのメリットがあり,実用化される日も近いことが示された.

     

  7. 「EV・HEV用モータの開発と要素技術」
    山本恵一(本田技研)

     1990年代初頭より電動車両の研究を本格的に開始し,主電動機を内製してきたホンダにおいて開発してきた要素技術が紹介された.INSET SPM型ロータの開発では磁石強度の確保と発熱が問題となったこと,磁石分割による発熱の抑制,非対称巻線の採用による占有率の向上,ロータヨークに対する高飽和磁束密度材の採用などにより,モータ性能が改善されてきたことが示された.
     

 本研究会では、誕生から20年以上が経過した現在も進歩し続けるNd-Fe-B系磁石の最新動向と,風力発電,鉄道車両駆動モータ,EV・HEV用モータへの応用について,第一線の研究者をお招きし,貴重な最新の成果をわかりやすくご紹介いただきました.どの講演におきましても質疑応答が活発に行われ,この分野への関心の高さを改めてうかがい知る事ができました.最後に,お忙しい中,お引き受けいただきました講演者の皆様に紙面をお借りして感謝いたします。

(信越化学 中村 元)