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会長からの挨拶

福永 博俊 長崎大学/日本磁気学会会長

<略歴>

1975年
九州大学工学部 電気工学科 卒業
同大学院工学研究科 修士課程・博士課程を経て
1980年
九州大学工学部 助手(電気工学科)
1984年
長崎大学工学部 助教授(電気工学科)
1993年
同教授
2004年
同大理事・副学長(教授兼務)
2008年
同大工学部 教授(電気電子工学科)
2011 年
同大大学院工学研究科 教授(グリーンシステム創成科学専攻)
2013 年
同大理事・副学長(教授兼務),現在に至る.


 本学会は,日本学術振興会第137委員会を母体として,1977年に「日本応用磁気学会」として発足しました.2007年10月には,学会名を「日本磁気学会」と改称し,現在に至っています.2015年5月より,歴史ある本学会の会長を務めることとなり,誠に名誉なことと感じるとともに,心の引き締まる思いです.

 本学会は,理学,工学などの磁気にかかわる研究を,基礎から応用まで横断的に扱う学会です.したがって,会員の所属は,大学・研究機関から産業界まで広がっており,その専門分野も,物理,化学,電気・電子,金属,生物,医学,歯学などと多様です.2014年開催の学術講演会での講演を例に取ると,講演の分野は,薄膜・微粒子・多層膜・人工格子,ハード・ソフト磁性材料,スピンエレクトロニクス,計測・高周波デバイス,磁気物理,磁気記録,パワーマグネティクス,生体磁気・医療応用,強磁場応用と広範囲に及んでいます.学会が発足した1977年当時,私は電気工学を専攻する大学院生でしたが, 応用磁気学会の学術講演会で発表すれば,物理や金属を専門とされる先生方や研究者の方々からもコメントをいただくことできると,大きな刺激を受けたことを記憶しています.2007年の改称において,学会名から「応用」の文字が取れましたが,これは,本学会の活動が基礎分野から応用に至るまで多岐にわたることを反映したものです.応用の文字の有無にかかわらず,磁気現象のデバイスへの応用や産業への展開に関する研究は,発足当時から一貫して,本学会の大きな柱です.

 多様な専門分野を「磁気」という横串で束ねた本学会は,多様な学問体系の研究者による情報交換や議論が可能であることを大きな魅力としますが,一方では,多様な研究者が集うがゆえに,活動が上滑りとなる危険性もあります.学会運営の面では,学会活動を支える特定の産業界が存在しないことに不便を感じることもあります.研究の「広がり」と「深さ」を両立させるべく,本学会では年に一度の「学術講演会」に加えて,アップデートなテーマを設定して行う「研究会」,岩崎俊一名誉会員より日本国際賞受賞を記念して賜った寄付に基づいて行う「岩崎コンファレンス」,将来の研究の芽を育てること,あるいは,当該テーマの研究の活性化を目的とした「専門研究会」などの活動を行っています. また,教育活動としても,磁気の分野での研究歴が比較的短い研究者を対象とした「初等 磁気工学講座」および最新の研究情報を3日間にわたって紹介する「サマースクール」を開催しています.これらの活動を有機的に結合して,「広がり」と「深さ」を兼ね備えた 学会活動を展開していきたいと考えています.

 本学会は,海外会員を含めて会員数2,000名程度の小規模な学会です.残念なことに, 近年,会員数が減少する傾向にあります.これには,わが国の産業構造の変化を反映している部分もありますが,わが国の学術研究において,「磁気」の重要性には揺るがないものがあります.このことは,2010 年に岩崎俊一名誉会員が「垂直磁気記録の開発による高密度磁気記録技術への貢献」で,2012 年には佐川眞人名誉会員が「世界最高性能 Nd–Fe–B系永久磁石の開発と省エネルギーへの貢献」で国際科学技術財団から日本国際賞 (Japan Prize) を受賞されたことにも象徴されています.二本正昭前会長が示された「仲間の増加」,「国際化」,「情報発信力の強化」を引き継ぎ,磁気分野の学術研究にさらなる貢献ができる学会たるべく,本学会の一層の活性化に取り組んでいく所存です.

 私は,現在,国立大学法人に籍をおいています.私の所属する大学が大規模大学ではないことから,国立大学が法人化されたころから,「山椒は小粒でぴりりと辛い」と言う言葉が好きになりました.本学会は決して大きな学会ではありませんが,ぴりりと辛い学会でありたいと思っています.