第232回研究会 / 第57回強磁場応用専門研究会

磁場の時空間制御と弱磁性物質への応用

日 時:
2020年5月12日(金)13:00~16:15

場 所:
オンライン開催(Webex)
参加者:
21名

 超伝導技術の進展とともに主にソレノイド型の高磁場発生技術が発展し,10テスラ級の高磁場環境がラボレベルで普及してきている.その結果,物質・生体の形態・配向制御や分離・分析技術などへの磁場利用に関する応用研究が広がってきている.さらに研究対象の広がりから,静的な磁場に加えて,空間的および時間的に変調された磁場の利用例が増加してきている.そこで,本研究会では磁場の時空間制御を利用した最前線の研究について講演いただいた.

  1. 「回転磁場を用いた無機材料の結晶配向制御」
    ○鈴木 達(物材機構)

     はじめに,無機セラミックス材料の優れた特性を生かすにあたっての微構造制御の重要性について紹介いただいた.微構造制御の中で結晶配向は特性を改善させる重要な因子であるが,せん断などの方法では配向方向や部材形状に制限があり好ましい方向への配向制御は容易ではない.そのような場合に磁場による配向制御が有効であることを紹介いただいた.静磁場または回転磁場とコロイドプロセスの組み合わせによって,炭化ケイ素,窒化アルミニウム,およびコバルト酸リチウムの配向制御が成功した結果,特性改善につながったことを具体例として紹介いただいた.さらに炭化ホウ素とナイロン繊維の混合系を用いることでc軸配向した炭化ホウ素材の中に柱状気孔を導入した例について紹介いただいた.母相の結晶方位だけでなく,造孔材の配向も同時に制御することで細孔構造制御にも成功しており,無機セラミックス材料の微構造制御にさらなる磁場応用の可能性を感じさせるご講演であった.

  2. 「磁場配向のための物質および磁束の制御」
    ○堀井 滋(京都先端科大)

     はじめに,回転変調磁場を用いて微結晶の集合体の結晶方位を3軸揃えるために理論的背景について紹介いただいた.十分な配向を達成するためには大きな磁気エネルギーを与える必要がある.一方で,回転磁場を用いて磁化困難軸を配向させるためには,回転磁場に対して磁化容易軸が追随しない程度の磁場強度であることが必要である.これら相反する条件の中から適切な条件設定が重要であることが紹介された.また,材料開発への回転磁場応用を見据えると,連続プロセスへの適用が可能な非回転型の磁場発生装置が必要であることを紹介いただいた.原理証明として配列永久磁石が材料上で直線運動するリニア駆動型回転変調磁場発生装置を考案し,結晶配向制御に成功したことを紹介いただいた.まだ課題は山積しているとのことであるが,あらたな材料作製プロセスとしての磁場配向の汎用性を高める手法として今後の発展が期待されるご講演であった.

  3. 「ローラー型永久磁石式磁場源」
    ○佐久間洋志(宇都宮大)

     はじめに,磁場源としての永久磁石の有用性について紹介いただいた.なかでもHalbachシリンダーはその内部に強力で均一な磁場を発生させることが可能ではあるが,製作が難しく容易に利用できる磁場源となっていないことが紹介された.佐久間氏は入手しやすい円柱型の永久磁石に注目し,これを用いたローラー型磁場源の磁石配置パターンについて詳細に検討を重ねられた.4本と6本の円柱型永久磁石について, Covariance Matrix Adaptation Evolution Strategy法を用いて最適な配置を決定した.求められた配置をもとに作製した試作機との比較で磁場強度については10%程度の差異が認められたそうであるが,最適化を2次元で評価したためで今後3次元に拡張することで改善が期待できるとのことであった.今後はドラッグデリバリーへの応用も視野に入れて不均一磁場発生の磁場源について検討を行っていく予定とのことである.

  4. 「バイオセンサへの磁気トラップ応用」
    ○牛島栄造1,藤本 諭2,中里和郎3
    1イムラ・ジャパン,2メムス・コア,3名大)

     はじめに,イメージセンサの利用形態について紹介いただいた.そのなかでイメージセンサをイオンセンサとして利用する試みが紹介され,バイオ分野での実用化が大いに期待されていることを紹介いただいた.アレイ状に規則配置された個々のセンサ部分に,分子認識部位を表面に固定した微粒子を反応場として配置すると,感度向上や定量性向上が期待されると紹介いただいた.牛島氏はCOMSイメージセンサチップにMEMSプロセスを利用して磁気回路を組み込み,そのチップをハルバッハ配列磁石上に設置することで,個々のセンサ部分に微粒子を一個だけ配置することに成功した.今後は分子認識部位を導入した微粒子を用いて,感度への影響などについて評価する予定とのことである.

  5. 文責:山登正文(都立大)