48.02

分野:
岩石磁気学
タイトル:
古代の地磁気情報を岩石の残留磁化より議論する
出典:
“Palaeointensities of the Auckland geomagnetic excursions by the LTD-DHT Shaw method”
Nobutatsu Mochizuki, Hideo Tsunakawa, Hidetoshi Shibuya, John Cassidy, Ian E.M. Smith
Physics of the Earth and Planetary Interiors 154 (2006) 168-179
概要:
 東京工大の望月らは、ニュージーランド オークランドより採取した種々の岩石に対し、古地磁気の磁場強度測定法の一種である低温消磁・二回加熱ショー法を用いて磁気特性の調査を系統的に行ない、地球磁場強度の履歴を議論した。2.9~5.5万年前に、地磁気のdipole成分は2×10^22 Am^2まで減少していた可能性が示唆された。
本文:
地磁気の逆転は地球磁場最大の変動であり、極性の反転と磁場強度の大幅な減少を伴う。地磁気逆転は平均して数十万年に一回の頻度で1000~8000年程度を費やして逆転することが明らかになっている。また、逆転と始まりは似ているが、極性の反転に至らず元の極性に戻る地磁気のふらつき(2000年間程度)が知られていて、地磁気のエクスカーション(遠足)と呼ばれている。これらは岩石の磁気情報(自然残留磁化)を元に議論が成されている。なお磁気情報は岩石中のマグネタイトなどが担っている。

 オークランドの6つの火山における岩石は、2.9~5.5万年前に起きた複数回のエクスカーションを記録していて、残留磁化の方位に基いて北下向き(ND)と西上向き (WU)と南上向き(SU)の3つのグループに分類される。本論文では、8つの火山より得られた岩石試料について系統的に地球磁場強度の測定を行った。

 低温消磁・二回加熱ショー法と呼ばれる交流消磁と熱残留磁化着磁を組み合わせた手法を適用することで残留磁化強度を測定した結果、各火山から採取した5~6個の試料からは、ほぼ一致する地球磁場強度が得られた。特にNDグループに属する3つの火山の試料の残留磁化は2.9万年前のエクスカーションを同時に記録したと考えられているが、これらの火山からは同じ強度が得られており、今回の磁場強度推定の信頼性が高いことを示している。

 エクスカーションを記録する試料から得られた磁場強度は2.5~11.8uTの範囲の値を示し、地球中心においた地磁気双極子モーメント (VDM)に換算すると0.6~2.1×10^22Am^2に相当するものであった。これは現在の地磁気双極子モーメント(7.8×10^22Am^2)の1/4以下に相当する。また、エクスカーションではない時代の地球磁場強度は13.1~40.0 uT(2.1~6.9×10^22Am^2)の範囲であった。これらの結果より、2.9~5.5万年前の地磁気のdipole成分は2×10^22 Am^2以下に減少することが示唆された。

(高輝度光科学研究センター 小嗣真人)