【分野】 磁気応用

【タイトル】 「磁気トムソン効果」の直接観測に世界で初めて成功
【出典】:Ken-ichi Uchida, Masayuki Murata, Asuka Miura, and Ryo Iguchi “Observation of the Magneto-Thomson Effect” Physical Review Letters, 125, 106601 (2020).
DOI: 10.1103/PhysRevLett.125.106601

「磁気トムソン効果」の直接観測に世界で初めて成功 ~熱・電気・磁気変換現象に関する新たな物性・機能開拓へ道~
NIMS プレスリリース 2020年9月2日
https://www.nims.go.jp/news/press/2020/09/202009010.html
産総研 プレスリリース 2020年9月3日
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2020/pr20200903/pr20200903.html

【概要】
ロックインサーモグラフィー法を用いて、導電体に温度差と磁場を与えながら、電流を流した際に生じる吸発熱現象を精密に測定し、温度差を付けた導電体に電流を流すと生じる吸熱・発熱 (トムソン効果) が磁場に依存して変化する現象「磁気トムソン効果」を直接観測することに世界で初めて成功した。

【本文】
NIMS 磁性・スピントロニクス材料研究拠点 スピンエネルギーグループの内田健一グループリーダー、井口亮主任研究員、三浦飛鳥JSPS特別研究員、産総研 省エネルギー研究部門 熱電材料物性グループの村田正行主任研究員の研究グループは、ロックインサーモグラフィー法と呼ばれる熱イメージング技術を利用することで、BiSb合金試料に電流を流した際の温度分布を測定し、磁気トムソン効果を観測することに成功した。トムソン効果は、熱電変換技術として広く研究されているゼーベック効果やペルチェ効果と並び、金属や半導体における基本的な熱電効果のひとつとして知られているが、磁場や磁性にどのように依存するかはこれまで明らかにされていなかった。今回、本研究チームは、ゼーベック効果が磁場に強く依存することが知られているBiSb合金を試料として用い、棒状に加工した中心部にヒーターを取り付け、正の温度勾配を付けた領域と負の温度勾配を付けた領域に周期的に変化する電流を印加し、吸熱・発熱信号を観測した。その結果、導電体に温度差と電流の両方に比例した吸熱・発熱が生じ、それに伴う温度変化が磁場を印加することで増強される振る舞いが観測された。トムソン効果に由来する信号は試料に温度勾配と電流の両方を与えた際に生じるのに対し、その他の熱電効果に由来する信号は温度勾配がなくても生じるため、観測された熱画像のヒーター出力依存性を測定することにより、トムソン効果の寄与を正確に評価することが出来る。磁場を印加しながら測定を行ったところ、トムソン効果に由来する吸熱・発熱信号が0.9 Tの磁場で90%以上増大し、BiSb合金においては磁気トムソン効果の寄与が磁場に依存しない成分に匹敵するほど大きいことが示された。
今後、熱電分野やスピンカロリトロニクスの基礎科学・応用技術のさらなる発展が期待される。
(日亜化学工業 吉田理恵)