分野:磁気記録
タイトル:磁気モーメントの渦の運動が可能にする省エネルギー情報記録

出典:
W. Zhou, T. Seki, H. Arai, H. Imamura, K. Takanashi
“Vortex Dynamics-Mediated Low-Field Magnetization Switching in an Exchange-Coupled System”
Physical Review B, Rapid communication, 94 (2016) 220401(R)
doi: 10.1103/PhysRevB.94.220401

「磁気モーメントの渦の運動が可能にする省エネルギー情報記録 ―ハードディスクの長高密度化と超低消費電力動作の両立に新たな道―」
2016年12月8日 東北大プレスリリースhttp://www.tohoku.ac.jp/japanese/2016/12/press20161208-1.html
2016年12月9日 産総研プレスリリースhttp://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2016/pr20161209/pr20161209.html

概要:
東北大学金属材料研究所と産業技術総合研究所スピントロニクス研究センターの共同研究グループは、Ni-Fe(パーマロイ)合金とFePt規則合金を組み合わせたナノサイズドットを作製し、Ni-Fe合金における磁気モーメントの渦構造の磁化運動を利用すると、FePt規則合金の磁化反転磁場を大幅に低減できることを発見した。磁気渦の運動を利用して隣接する磁性体の磁化を反転させる研究報告は、本研究が世界初となる。これにより、磁気記憶デバイスにおける超高密度化と低消費電力動作の両立に向けて新しい道筋が示された。

本文:
現行のハードディスクドライブ(HDD)をさらに高密度化するためには、より磁気異方性エネルギーの高い強磁性層を用いることが不可欠である。FePt規則合金は次世代の磁気記憶デバイス材料の有力候補であるが、現段階では磁化反転磁場が大きく、情報書き込み時の消費電力を増大させてしまう点が、実用化に向けた一つの障害となっていた。
東北大学金属材料研究所の周研究員、関准教授、高梨教授と産業技術総合研究所の荒井研究員、今村研究チーム長との共同研究グループは、Ni-Fe合金層とFePt合金層を積層させた直径260 nmのナノサイズドットを作製し、磁化反転の挙動を調べる研究を行った。その結果、高周波磁場を印加することでNi-Fe合金層に形成された磁気渦の運動が励起され、そのNi-Fe合金層に隣接するFePt合金層の磁化反転磁場がある特定の周波数で大幅に低減することを発見した。さらにマイクロマグネティックシミュレーションの結果と比較し、磁気渦のスピン波ダイナミクスによりNi-Fe合金層に過剰な磁気的エネルギーが蓄積され、その余分なエネルギーを低減させるためにFePt合金層の磁化が反転するという非局所的プロセスを介した磁化反転挙動を明らかにした。
磁気渦の運動に関する研究報告の例はこれまでにあったが、磁気渦の運動を利用して隣接する磁性体の磁化を反転させるという研究報告はなく、今回の研究成果により磁気渦の新しい機能が実証されたことになる。これにより、磁気記憶デバイスにおいて超高密度化と低消費電力動作の両立に向けた新しい道筋が示されたことになり、今後は更なる反転磁場の低減による高効率化が課題となるであろう。

(東北大学 金属材料研究所 梅津 理恵)