142.01
【分野】スピンエレクトロニクス

【タイトル】アモルファスからの結晶化による高規則度ホイスラー合金薄膜

【出典】
Y. Choi, T. Nakatani, J. C. Read, M. J. Carey, D. A. Stewart, and J. R. Childress, “Enhancement of current-perpendicular-to-plane giant magnetoresistance by insertion of amorphous ferromagnetic underlayer in Heusler alloy-based spin-valve structures”, Applied Physics Express 10, 013006 (2017); https://doi.org/ 10.7567/APEX.10.013006

【概要】
HGSTのChoiらは、ホイスラー合金薄膜のアモルファスからの結晶化を利用し、高い規則度と高い面直電流巨大磁気抵抗(CPP-GMR)出力を得る方法を発表した。これは、極薄のCoFeBTaアモルファス薄膜上にホイスラー合金膜を堆積することで実現され、HDDのリードセンサー等実用デバイスへの適用が可能である。

【本文】
  理論的に100%スピン分極したハーフメタルと予測されるコバルト基ホイスラー合金を用いると、高いトンネル磁気抵抗(TMR)やCPP-GMRが実現される。現在までに、室温で数100%のTMR比や50%以上のCPP-GMR比がCo2(Mn,Fe)SiやCo2Fe(Ge,Ga)といったホイスラー合金を用いて実現されているが、いずれもMgO単結晶基板上にエピタキシャル成長させた単結晶ホイスラー合金薄膜に対し、500 °C以上での高温熱処理を行い、L21規則構造を得ることによって達成されたものである。一方で、ハードディスクドライブ(HDD)のリードセンサー等実用デバイスでは、スピンバルブのプロセス適合性やコスト面から、センサー薄膜は多結晶であることが必須であり、熱処理温度は300 °C程度であることが求められ、そのような制約の下で高いスピン分極率を示すようなホイスラー合金の材料とプロセスの開発が重要である。
 HGST(現Western Digital)のChoiらは、Co2(Mn,Fe)Geホイスラー薄膜をCoFeBTaアモルファス下地層上に堆積することにより、CPP-GMR比が増大することを示した。これはCoFeBTa上に、ホイスラー合金組成薄膜がアモルファス状態で成膜され、熱処理時に結晶化と同時に化学規則化が進行することを利用したものである。CoFeBTa挿入により、300 °Cでの熱処理後のCo2(Mn,Fe)Ge薄膜がB2規則化することがX線回折によって示されている。CoFeBにBと親和性の高いTaを7%添加することにより、CoFeBの結晶化温度を450 °C程度に上げることによって、アモルファス下地層としての効果を高めている。このアプローチは、工業的に重要なスピンバルブ構造に適用可能であるため、ホイスラー合金を用いた実用デバイスの実現に重要な技術といえる。

(物質・材料研究機構 中谷友也)