111.01

分野:
磁性材料
タイトル:
ネオジム合金浸透熱処理での膨張を拘束しDyフリーNd-Fe-Bバルク磁石実現
出典:
T. Akiya, J. Liu, H. Sepehri-Amin, T. Ohkubo, K. Hioki, A. Hattori, K. Hono, Scripta Materialia, In Press, Corrected Proof, http://dx.doi.org/10.1016/j.scriptamat.2014.03.002 NIMSプレスリリース(3月26日)
 
 
概要:
物質・材料研究機構の宝野和博フェローらの研究グループは大同特殊鋼との共著論文において熱間塑性加工法で作製した異方性ネオジム系微結晶バルク磁石を基材として膨張拘束下でNd-Cu低温共晶合金を粒界拡散処理することにより高磁化を維持したまま保磁力を高められることを報告した。
 
 
本文:
物質・材料研究機構の宝野和博フェローらの研究グループは大同特殊鋼との共同研究により、熱間塑性加工法で作製した異方性ネオジム系微結晶バルク磁石への低融点ネオジム共晶合金Nd70Cu30の粒界拡散熱処理において生じるNd-Cu合金の浸透に伴う体積膨張を拘束治具により抑制するという単純な方法を用いて、高い磁気エネルギー積を維持したまま高保磁力化できることを報告した。粒界拡散時の体積膨張が主として磁化容易軸配向方向に生ずるという特異な異方性に着目し、配向方向の長さ変化を抑制する拘束治具を用いてNd-Cu合金微粉末を塗布した磁石を挟んで熱処理するという比較的単純な方法である。基材磁石の残留磁束密度1.39Tが拘束なしの場合は1.27Tに減少したが、拘束熱処理では1.36Tを保ち、保磁力は1114kA/mから1528kA/mに増加した。試料は配向方向が約6mm、直角方向が7mm正方のバルク形状で、拡散熱処理は650℃、3時間でNd-Cu合金が磁石内部に浸透する。さらに、拡散熱処理後の試料の保磁力の温度係数が室温で同等の保磁力を有する焼結磁石と比較して小さく、200℃でも約400kA/mの保磁力と191 kJ/m3 の最大エネルギー積を維持した。
200℃でハイブリット自動車の駆動モータに使用するにはさらなる高保磁力化が必要と考えられるが、ネオジム磁石のDyフリー化に向けて、今後の実用化への進展が期待される。

(物質・材料研究機構 元素戦略磁性材料研究拠点 広沢 哲)

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