64.07

分野:
磁気応用
タイトル:
第169回研究会「磁気測定法の最先端と今後の展望」
出典:
The noise rejection method for magnetocardiogram using wavelet transformation and independent component analysis, Koichiro Kobayashi, Masahito Yoshizawa and Yoshinori Uchikawa, 11th Joint MMM-Intermag conference 2010(Washington, USA)
概要:
 2009/12/18中央大学駿河台記念館にて開催、参加者は26名であった。小規模な研究室から放射光研究施設や中性子研究施設といった大規模なものに至るまで,様々な場所で活躍する磁気測定技術は,磁性研究の基本である.それらの中には,最近になってやっと利用可能となったものや,最近,目覚ましい進歩を遂げたものがあり,これまで見えなかったものが観測可能になってきている.そこで,最先端の磁気測定技術の開発と,それを利用して研究を行っている第一線の7名の研究者を講師に迎え,最新の研究成果の紹介と,それらの測定法が拓く磁性研究の新たな展開について議論を行った.なお,本研究会は他の学術団体との交流を深めることを目的とし,中性子産業利用推進協議会との共催(磁性材料研究会 第1回研究会)の形で開催した.協議会メンバーの参加は8名であった.
本文:
 

  1. 「J-PARCのパルス中性子を利用した磁性研究の展望」 新井正敏(J-PARC)
    J-PARCの物質生命科学実験施設は中性子散乱施設とミュオン実験施設からなっている.現在,加速陽子パワーは100 kWで,最終目標の1 MWの10分の1ではあるが,これまでとは質の違う実験データが得られており,その具体的な紹介があった.また,それらの測定例から,とりわけ磁性材料の研究に秀でた成果が期待されるとの展望が示された.
  2. 「軟X線フーリエ変換ホログラフィー法とCo/Pt垂直磁化膜の磁気ドメイン・イメージング」○淡路直樹,野村健二、土井修一、磯上慎二1、角田匡清1、鈴木基寛2、中村哲也2(富士通研、東北大1、JASRI2)
    新しい磁気イメージング技術としての,X線フーリエ変換ホログラフィー法の紹介があった.この技術は,X線磁気円二色性を併用した,高分解能,元素選択制のある,強力な磁気イメージング法であり,垂直磁化膜への適用結果の紹介と,周辺技術などに関する展望が示された.
  3. 「スピン偏極走査電子顕微鏡による磁気デバイス観察」 孝橋照生(日立)
    走査電子顕微鏡にスピン分析を組み合わせた高分解能磁区観察装置である,スピン偏極走査電子顕微鏡(スピンSEM)に関する原理の説明と,それを用いた,ハードディスク記録ビットや,サブミクロン結晶異方性Nd-Fe-B磁石に対する,熱消磁状態から残留磁化状態への変化に伴う磁区構造の変化に関する観察例の紹介があった.
  4. 「紫外光源を用いた高解像度Kerr効果顕微鏡によるNd-Fe-B磁石の磁区観察」 竹澤昌晃(九工大)
    磁気Kerr効果顕微鏡に関する原理の説明と,装置構成および磁区観察例に関する紹介があった.紫外光源を用いることで約200 nmの高解像度を可能にし,Nd-Fe-B系微細結晶磁石の磁区観察に有用であることが示された.
  5. 「ポンプ&プローブ法による微小領域磁性体の時間分解光電子顕微鏡観察」 木下豊彦(JASRI, JST-CREST)
    SPring-8のBL-25SUでは,微小磁性体にパルス磁場を印加した後の応答を観察するため,ポンプ&プローブ法を利用した時間分解光電子顕微鏡実験を進めている.講演ではその概要と問題点,将来展望等が紹介された.
  6. 「放射光メスバウアー分光法による電子状態測定」 瀬戸誠(京大)
    メスバウアー分光法は,元素を特定して,その原子価,電子構造,および磁性についての情報を得ることができる手法である.その励起線源として放射光を用いることによって,これまでには困難であった微細試料や極限環境下での測定等が可能となるという最新の研究成果が示された.
  7. 「金属タンパク質を含む希薄磁性体研究のための高感度多周波ESR装置の開発」 萩原政幸(阪大)
    新たに開発した,円筒共振器やファブリペロ型共振器を用い,かつ高安定なマッチング機構を有した高感度多周波電子スピン共鳴(ESR)装置の詳細と,超伝導磁石とこのESR装置を用いた金属たんぱく質の研究に関する報告がなされた.

(原子力機構 武田全康)

磁気応用

前の記事

66.02
磁気応用

次の記事

64.08