56.04

分野:
磁気物理
タイトル:
第31回化合物新磁性材料専門研究会「層状Fe化合物での新超伝導体探索 -銅酸化物に迫れるか-」
概要:
 2008/12/19青山学院大学青山キャンパスにて開催、参加者は25名であった。最近発見された層状Fe系化合物超伝導体ではTcがMgB2を超え、非銅酸化物系では最高のTcを持つ物質群となった。層状Fe系化合物に対して一番興味が持たれるのは、更なるTcの向上は可能なのか?銅酸化物を越える可能性はあるのか?ということである。今回の研究会では講演者の方々に、層状Fe系化合物超伝導体に関する研究を紹介していただき、合成、物性、理論研究の現状について活発な議論が行われた。
本文:
 

  1. 「鉄系超伝導体エピタキシャル薄膜の作製と光電子物性」 平松 秀典(ERATO-SORST)
    LaFeAsOと同型構造を持つLnCuChO(Ln=希土類、Ch=カルコゲン)のエピタキシャル成長について網羅的に紹介され、最近開発されたLaFeAsOのエピタキシャル成長手法と、それを適用して得られたSrFe2As2エピタキシャル薄膜の超伝導特性の報告がなされた。
  2. 「FeX4正四面体構造を有する金属間化合物超伝導体の関連化合物の物質探索、ならびに単結晶育成」 鬼頭聖(産総研)
    FeX4(X: カルコゲン, プニクトゲン)四面体配位を有する金属間化合物超伝導体の分類、ならびにその分類方法に基づいた新化合物合成の試みについて紹介された。また電気抵抗の温度依存性等の諸物性測定に耐えうる単結晶育成についての報告がなされた。
  3. 「オキシニクタイド超伝導体LnFeAsO1-y(Ln=lanthanide)の結晶構造と超伝導の相関」 李哲虎(産総研)
    中性子回折による鉄ヒ素系超伝導体の結晶構造解析の結果より、鉄ヒ素系超伝導体が有するFeAs4四面体が正四面体となるとき、Tcが最も高くなることが示された。この結果はさらに高いTcをもつ新超伝導体を開発するための重要な設計指針を与えるものである
  4. 「層状リン化物BaX2P2(X=Ir、Rh)の超伝導」 平井大悟郎(東大)
    FeAs系超伝導体と同じ構造をもつBaIr2P2, BaRh 2P2, SrIr2 As2の3つの新超伝導体の発見が報告された。この発見により層状ニクタイドでは幅広い遷移金属において超伝導が発現することが明らかになった。
  5. 「層状Fe 化合物での新超伝導体探索:銅酸化物に迫れるか」 有田 亮太郎(東大, JST-TRIP)
    鉄系新超伝導体は、銅酸化物高温超伝導体と異なり、鉄の5 つのd軌道のバンドがフェルミレベル近傍で複雑に絡みあっている可能性があるという興味深い特徴を持つことが示され、この点を考慮した上で現在考えられる発現機構を概観し、さらに現在理論研究が抱える困難についての議論が行われた。

(横国大 上原政智)

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