分野:
磁性材料
タイトル:
「希土類磁石と応用」国際ワークショップで希土類磁石研究の最前線を活発議論
出典:
アブストラクトおよびプロシーディングス(参加者に配布),
http://www.ims.demokritos.gr/REPM08/
 
 
概要:
 北京大学のWanらはNd-Fe-B系磁石合金微粉末と低融点Pr-Cu共晶合金粉末を重量比80:20で混合焼結し、平均結晶粒径4.5μmのDyフリー焼結磁石で保磁力21kOe(1.67MA/m)を得た。
 
 
本文:
 本会議は希土類磁石と応用国際ワークショップの第20回にあたり,ギリシャNational Center of Scientific ResearchのD. Niarchos教授が議長となって組織され,9月8日から10日の3日間にわたってクレタ島ヘラクリオン市で開催された.

 日本からの発表はNd-Fe-B磁石における省Dy化技術が中心の感があるが,米国,ヨーロッパにおいては付加価値の高い特殊用途・特殊材料への関心が高く,各国の事情を色濃く反映した発表が聞かれた.

 登録者数は101名で,日本人は24名と前回の北京(2006年)と比較すると桁違いの多さであった.国内での研究再活性化の結果と思われる.

 東北大学の杉本諭教授が初めてNd-Fe-B焼結磁石省Dy化プロジェクトの研究構想を説明し,その一部を担うインタメタリックス社の佐川氏は「高速微粉砕」による微粉末作製から極低酸素雰囲気でのプレスレスプロセスおよび焼結にいたる工程の概略を発表した.
 信越化学工業の廣田氏は日本では日本磁気学会「まぐね」8月号に掲載のTbおよびDyの酸化物またはフッ化物粉末コート・粒界拡散プロセスによる省Tb/Dy高保磁力化技術を説明し,モータ用アークセグメントのパーミアンス解析に応じて保磁力を分布させた磁石の概念を紹介した.
 日立金属は冒頭で高性能磁石材料の現状について報告したほか,西内氏と広沢が夫々,HDDRプロセスでの組織形成過程と保磁力発現,および,焼結Nd-Fe-B磁石での粒界界面生成相と保磁力との関係を議論した.
 物質・材料研究機構の宝野氏はマルチスケール解析による高解像度組織写真および原子尺度の組成分析等に基づき,材料組織と保磁力との関係を論じた.
 英国シェフィールド大学のT. Schrefl教授は,分子動力学(MD)手法による結晶粒界表面の格子歪みのシミュレーションにより,最小エネルギの構造として厚み1.1nmの非晶質Nd層を挟んだ構造を導出し,界面構造の磁化反転臨界磁界への影響を議論した.
 ほかに保磁力発現機構,薄膜および厚膜磁石とその応用,航空宇宙用途の高耐熱希土類コバルト磁石,ナノコンポジット磁石への様々な取り組みなど,約100件が発表された.

 会場のホテルが会期一週間前に変更されるというアクシデントがあったが,主催者側の手際よい対応で比較的スムーズに運営された.ポスター発表がコーヒーブレーク時間帯に設定され,しかもコーヒーは野外に設置のため、ポスター会場にはほとんど人が来ないというまずい点もあったが,全体的には大変活発な議論がなされ,次回,2010年のスロベニア(議長はJozef Stefan研究所のSpomenka Kobe博士)での再会を約束して閉幕した。

(日立金属(株) 磁性材料研究所 広沢 哲)