18.04

分野:
磁気記録
タイトル:
MMM会議における垂直磁気記録媒体に関連した発表について
出典:
50th Annual Conference on Magnetism and Magnetic Materials San Jose, CA, (2005/10/30-11/3)
 
概要:
 今年のMMM会議における垂直磁気記録媒体関連の発表についてまとめた.グラニュラ系媒体では,種々のシード材料を用いた特性改善,二層グラニュラ媒体,SFD評価等,特定の内容に発表が集中していた.一方,FePt系規則化合金の発表件数は落ち着いてきている.ディスクリート媒体,パターン媒体等に関連した発表は少なかった.
本文:
 垂直磁気記録HDDの製品化が一部開始された今年のMMM会議における磁気記録媒体に関するセッションでは,グラニュラ系垂直媒体の特性改善とFePt系材料の発表が多かったが,次世代技術に関連する発表は少なかった.

 現在の垂直媒体の主流となっているCoPtCr-SiO2媒体あるいはCoPtCrO媒体(以下、グラニュラ媒体と呼ぶ)の特性改善に関しては,シード材料による構造・磁気特性の改善に関する内容が10件程度あり,その他に,これらグラニュラ系媒体のSwitching Field Distributionの評価に関する発表が5件あった.一方,グラニュラ媒体の性能をさらに向上させる試みとして,二種類のグラニュラ膜を重ね合わせる媒体の発表件数が大幅に増え11件に達している.構造あるいは発想の違いから様々な二層構造の媒体が検討されているが,シミュレーションで予測されているような特徴が実際に実現できるのか,今後の実験による検証が期待される.グラニュラ系媒体に関しては,上記のような特定の内容にほとんどの発表が集中していた点が特徴的であった.

 一方,Intermag2005の時と同様にFePt系の規則化合金の発表が多く,記録に関するセッション中で14件,微粒子等の他のセッションを全て含めると40件の発表があった.ただし,必ずしも磁気記録を目的としない構造・物性等に関する発表も多く含まれ,FePtの記録応用に関する発表件数は落ち着いてきた印象を受けた.

 この他,媒体関連の発表では,構造・磁気特性の評価に関する発表が8件,記録再生に関連した発表が4件,ニュークリエーション型の磁化機構(Exchange-Springマグネットの考え方を含む)に関する発表が数件あった.二層膜媒体の軟磁性裏打ち層(SUL層)に関する発表は3件程度に留まった.

 一方,光アシスト記録の基礎物性に関する発表が5件あったが,ディスクリート媒体,パターン媒体に関連する内容は少なく,ドットアレイ等のセッションに含まれるドットの磁化機構および作製手法に関する内容を含めても5件程度に留まった.ディスクリート媒体については,物性指向のMMM会議に必ずしもそぐわない点も考慮すべきではあるが,製品開発に直結する内容なので学会レベルで発表し難いことも予想される.一方,スピンダイナミクスに関する発表は全体的に増えているが,媒体に関係するダイナミクスについては,一部のシミュレーションを除き発表がほとんど無く残念であった. 

(東北大学電気通信研究所 島津武仁)

磁気記録

前の記事

20.03
磁気記録

次の記事

17.05