分野:
スピンエレクトロニクス
タイトル:
スピンエレクトロニクスに関する注目すべき報告相次ぐ
概要:
 第66回応用物理学会講演会において、スピンエレクトロニクスに関する多くの報告があった。特に東京大学の田中教授グループによるGeベースの新しい強磁性半導体Ge1-xFexに関する研究、東北大学の猪俣教授グループによるMgOトンネル障壁を用いる強磁性2重トンネル接合におけるスピン偏極量子井戸とスピン注入磁化反転に関する研究、東北大学の宮崎教授グループによるホイスラーCo2MnSi合金を用いたMTJ素子の大きなTMR比に関する研究が注目された。
本文:
 東京大学の田中雅明教授グループは、IV族半導体であるGeをベースとした強磁性半導体の合成に取り組み、FeをドープしたGe1-xFex薄膜が有望であることを報告した。Ge1-xFex試料は強磁性を示し、キュリー温度はx=0.05で50K程度である。この試料において、磁気光学効果の一種である磁気円二色性(MCD)スペクトル測定を行った。その結果、MCDはGeのバンド構造の臨界点に相当するエネルギー付近で増強していることから、母相半導体であるGeのspバンドがFeのd電子と強く混成していることを明らかにした。さらに、MCD強度は磁化と同様の磁場および温度依存性を示したことから、Ge1-xFexは本質的な強磁性半導体である可能性が高いと結論した。

 東北大学の猪俣教授グループはFe(001)/MgO(001)/Fe(001)island/MgO(001)/Fe(001)構造から成るエピタキシャル強磁性2重トンネル接合において、微分コンダクタンスに振動成分を観測した。膜厚依存性等を詳細に検討した結果、観測された振動はFe(001)islandに形成されたスピン偏極量子井戸に起因する量子振動効果であるとした。さらに、同じ試料を用いてスピン注入磁化反転実験を行い、中間のFe-islandの磁化反転に成功したと報告した。

 東北大学の宮崎教授グループは、ハーフメタル強磁性体とされているホイスラーCo2MnSi合金を用いたTMR素子を作製し、2Kで159%、室温で70%のMR比を達成した。これらの値は、ホイスラー合金を用いたMTJにおける最高値である。高いMR比を実現するためには、Co2MnSiの高いL21構造の規則度と原子レベルで平坦な表面が大切であるとした。この成果はJpn. J. Appl. Phys. 44, (2005) pp.L1100に掲載された。

(産総研 齋藤秀和)