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アモルファスワイヤ高感度マイクロ磁気センサがVodafone携帯電話に採用

  平成17年1月31日に、Vodafoneと愛知製鋼(株)が高感度マイクロ磁気センサ5個と信号処理マイクロプロセッサを5mm幅、5mm長さ、1.5mm厚さの1チップに組み込んで、携帯電話本体(シャープ)の傾き角や加速度などのモーションセンシングおよび地磁気利用の方位センシングを同時に行う「方位感覚をもつ電子三半規管チップ」を内蔵する携帯電話を開発したことが一斉に報じられた(下記のHPを参照)。

http://ascii24.com/news/i/hard/article/2005/01/31/653971-000.html?top
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2005/01/31/004.html
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/22407.html

  この高感度マイクロ磁気センサは、アモルファスワイヤの高感度磁気インピーダンス効果(MI効果)をCMOSFETインバータ電子回路で実現し集積回路化(MIIC)したもので、1993年以来、本学会とIEEEで育った磁気デバイスであると言える。5個のMIセンサは、3直交軸に配置したアモルファスワイヤをヘッドとする3次元地磁気センサおよび2個のMIセンサと2個のマイクロ磁石を組み合わせた2次元加速度センサを構成し、磁界検出分解能は0.1mG,傾斜角検出分解能は1°、消費電力はチップで数mWである。このマイクロ加速度センサは2つの機能を発揮し、1つは携帯電話本体の水平面からの傾斜角検知によって3次元磁気センサの動作点座標軸角度を決定して3次元方位センサを構成すること、もう1つは携帯電話自身のモーションを検知してキー入力でなく手首の動きで入力したり、体を動かすゴルフなどのゲームを楽しめることである。このような携帯電話は、本来のコミュニケーションアシスト機能に加えて、個人の行動判断アシスト機能をもつポケッタブル知的情報端末として、情報社会の発展形としてのユビキタス社会の中核デバイス(2004年の世界生産台数は6億4千万台)を形成していくと思われる。技術的には、センサとソフトウェアが密着している点が特徴である。
  MIセンサは、1993年に線引きアモルファスワイヤの高感度磁気インピーダンス効果による高感度マイクロ磁気センサの原理の発見から始まり、1997年にCMOSFETインバータとの組み合わせで集積回路可能なセンサ回路(ディジタル回路)へ進み、1998年のJSTハイテクコンソーシアム、1999~2002年のJST委託開発で愛知製鋼が開発成功(2000年研究開発ベンチャーのアイチマイクロインテリジェント(株)起業)、2003年に集積回路チップ開発、2004年韓国LG電子の携帯電話に電子コンパス(2次元)として採用という産学官の緊密な連携を経て、今回電磁気量と力学量を1チップで検知し情報処理する知能的チップへと発展している(原理の詳細等は、毛利佳年雄「磁気センサ理工学」(コロナ社:平成16年度本会出版賞)を参照)。