高周波用磁気デバイス・材料・評価技術の現状と新展開

日 時:
2017年2月21日(火) 10:00~16:45
場 所:
中央大学駿河台記念館
参加者:
42名

 第212回研究会では、“高周波”をキーワードとして関連する磁気デバイス、材料、物理、評価技術にまつわる最先端研究の紹介と今後の展望について7名の講師を招いて講演いただいた。高周波計測、スピントルク磁気共鳴現象、ノイズの積極活用、金属ナノ複合材料、圧粉成型技術、生体磁場測定用高感度TMRセンサ、圧縮センシングを用いた画像処理技術まで非常に幅広いバラエティーに富んだ内容の研究会となった。分野によってHz帯域からGHz帯域まで“高周波”とする帯域が大きく異なる中で、講師には初学者にも分かりやすく講演いただき、活発な議論が行われた。各講演の概要は以下のとおりである。

  1. 「高周波磁性材料および高周波磁気計測の開発」
    ○遠藤 恭(東北大)

     数百kHz~数GHzの周波数帯域における薄膜形状および微粒子形状の高周波材料について、独自の作製方法、高周波デバイス応用の結果について紹介された。ミクロンサイズの微小な扁平形状微粒子を用いた小型マイクロインダクタの説明がなされた。また、高周波計測技術では、磁化ダイナミクスと磁気ひずみとを同時計測可能な新規高周波磁気計測技術の開発状況について紹介された。

  2. 「ナノ磁性体のスピントルク磁気共鳴とその応用」
    ○三輪真嗣(阪大)

     高周波スピントロニクス研究の中で重要な現象のひとつであるスピントルク磁気共鳴の原理について解説された後、その応用例として、ナノ磁性体の強磁性共鳴検出、スピンに働くトルクの評価、およびマイクロ波検出が紹介された。マイクロ波検出について、講演者のグループは、非線形スピントルク強磁性共鳴の利用により、半導体ショットキーダイオードの3倍の感度でマイクロ波を検出できることを実証した。

  3. 「雑音から探る固体素子の伝導ダイナミクス」
    ○小林研介(阪大)

     電流雑音、特に、熱雑音とショット雑音について詳しく説明された。その後、電流雑音測定によって固体素子の微視的な伝導ダイナミクスの情報が得られることが紹介され、その具体例として、MgO系トンネル磁気接合素子における精密な雑音測定によってコヒーレントトンネルを検証した成果について報告された。

  4. 「高周波用バルク磁性ナノ複合材料の開発」
    ○末綱倫浩(東芝)

     コア/シェル型ナノ粒子を用いたバルク磁性ナノ複合材料について報告され、カーボン被覆された金属ナノ粒子の部分酸化とカーボン除去の二段プロセスにより、粒径約10 nmのFeCoAl粒子表面に2~4 nmのAlFeCoO酸化物層が被覆されたコア/シェル型ナノ粒子の結果が示された。また、mmサイズのバルク磁性ナノ複合材料が1 GHzで透磁率3.2、損失係数がほぼ0 %の優れた特性を有していることが報告された。

  5. 「高周波インダクタ向け圧粉磁心」
    ○前田 徹(住友電工)

     パワーデバイスの高速化、大電力化に伴うインダクタ用磁心材料の高磁束密度化の要求を背景として、金属系磁性粉を絶縁処理し成型した圧粉磁心について低コアロス化を中心とした対策技術の報告がなされた。純鉄系材料における渦電流損失抑制のため、粉末の絶縁被膜の強化および粉末粒径の微細化の検討結果について紹介された。また、センダスト系材料に対する高耐熱絶縁被膜、および、薄肉均一被膜処理技術の開発により、従来材料に比べ半分以下のコアロス特性となることが示された。

  6. 「生体磁場測定応用の為の高感度TMRセンサの開発」
    ○城野純一1、 藤原耕輔2、 大兼幹彦2、 土田匡章1、 安藤康夫2
    1コニカミノルタ、 2東北大学)

     強磁性トンネル接合部と軟磁性材料を組み合わせた磁性膜が数千個程度集積された高感度TMRセンサ、および熱ノイズに匹敵する低ノイズアナログ信号増幅回路の開発結果について紹介された。また、それらを用いた生体機能測定の一例として心臓磁場測定について紹介され、数十pT程度の強度で体表面に発生している心臓磁場を測定できることが報告された。

  7. 「圧縮センシングと新方式コンピュータトモグラフィーへの応用」
    ○工藤博幸(筑波大)

     医療用CTにおいて測定した投影データから断層像を生成する画像再構成法に関して、新方式CTである以下の3つ、(1)測定方向数を通常の1/10~1/100に削減して画像生成を行うスパースビューCT、(2)関心領域のみに照射して画像生成を行うインテリアCT、及び、(3)被曝量低減した低線量CTについて、それぞれの画像再構成の原理とその鍵となる圧縮センシングの考え方について解説いただいた。

文責:大石一城(CROSS)、小川智之(東北大)、中田勝之(TDK)