「高周波電磁界活用の最前線」

日時:2013年1月31日(木) 13:30~17:00
場所:中央大学駿河台記念館
参加者:30名

 高周波電磁界は近年のIT機器の発展によって非接触給電からスピントロニクスまで多岐にわたり注目を集めている.そこで今回の研究会では,数十kHzから数GHzまで幅広い帯域の様々な業種における最新の高周波電磁界の応用について7名の講師に御講演いただいた.当日は,高周波というキーワードを軸に集まった非会員2名を含む30名の参加者において異分野間の活発な議論が交わされた.講演の概要は以下のとおりである.

講演内容:

  1. 「電場を用いた高速磁化反転」
    ○塩田陽一, 野崎隆行, Frederic Bonell, 三輪真嗣, 水落憲和, 新庄輝也, 鈴木義茂 (阪大)

     超薄膜FeCo合金を有する磁気トンネル接合素子におけるパルス電場による垂直磁気異方性変化に起因した磁化反転が紹介された.反転確率のパルス幅依存性から,磁化反転が磁化の歳差運動によるもので,さらに磁化の初期状態に関係なく高速かつ双方向に反転が行えることが紹介された.さらに実験結果がシミュレーションとよい一致を示すことが報告された.

  2. 「スピントルク発振素子型磁気ヘッドによる高密度磁気記録」
    佐藤利江 (東芝)

    1Tbit/in2以上の高密度記録を実現し,さらに発展させるイノベーション技術として,スピン流を利用したスピントルク発振素子(STO)を記録・再生のキーデバイスとして用いる方式が紹介された.このSTOを再生に用いた場合にGMRヘッドよりS/N比を向上可能な条件が示された.さらにSTOを用いる10 Tbit/in2超の記録密度が期待される新しい3D磁気記録方式が紹介された.

  3. 「高出力マイクロ波による強磁性共鳴を利用したCoCrPtグラニュラー膜の磁化反転」
    ○能崎幸雄1,石田尚子1,添野佳一2,関口康爾1 (1慶大,2TDK)

    強磁性共鳴スペクトルから磁化反転を検出する方法を利用したグラニュラー媒体のマイクロ波アシスト実験が紹介された.29 dBm,50 ns のマイクロ波インパルスにより,CoCrPt グラニュラー膜の保磁力を55%低減できることが示され,その磁化反転過程が一斉回転に近いモードと考えられることが報告された

  4. 「高周波磁気力顕微鏡の開発」
    ○遠藤 恭,山口正洋 (東北大)

    周波数がわずかに異なる2 つの正弦波信号(搬送波信号と参照波信号)を高周波伝送線路に入力し,その線路上で場のうなり(Beating field)を発生させて,MFM 探針により高周波近傍磁界を計測する新たな方法が提案され,実際にGHz 帯近傍磁界計測を行った結果が報告された.

  5. 「モバイル機器・医療機器における非接触電力伝送」
    ○松木英敏,田倉哲也,佐藤文博 (東北大)

    非接触電力伝送の伝送方式やその概念についてわかりやすい説明があったのち,近年期待の高まっている医療機器およびモバイル機器への非接触給電の適用例が紹介された.医療応用として経皮的電力伝送システム(TETS)および機能的電気刺激(FES)が報告され,モバイル機器への非接触給電技術としてLCブースター方式による給電法が報告された.

  6. 「多様に進化する磁気結合給電の出力推定に有効な等価回路」
    安倍秀明 (パナソニック)

    多様化する磁気結合給電の解析に有効な等価回路群とそれを用いて定式化した例が紹介された.1次コイルと2次コイルとの角度・位置・距離に対するロバスト性,多重磁気結合や双方向給電など,多様な磁気結合形態の進化軸が紹介され,それぞれの実用的等価回路と各形態における出力解析例が紹介された.

  7. 「EVにおけるワイヤレス給電の最近の動向」
    高橋俊輔 (昭和飛行機工業)

    EV用ワイヤレス給電方式として代表的なマイクロ波方式,電磁誘導方式,磁界共鳴方式の動向が紹介された.“少量電池・高頻度充電・航続距離延長”をコンセプトにした電動バスが,すでに長野市の循環バスとして運用されていることが報告され,コンセプトの有用性と残された課題が紹介された.さらに今後の方向性として走行中給電について紹介があった.

文責:芦澤好人(日大),佐々木智生(TDK),夏井昭長(パナソニック)