「薄膜アクチュエータの応用と新展開」-磁気工学における将来展望-

日 時:2000年12月22日(金) 10:00-17:00
場 所:機械振興会館
参加者:56名

プログラム:

  1. 磁性薄膜アクチュエータの現状と展望 
    荒井賢一(東北大)
  2. ヘッドアームポジショニング用圧電アクチュエータの駆動技術 
    江 鐘偉(山口大)
  3. 磁気ディスク装置とマイクロアクチュエータ
    植松幸弘(富士通)
  4. 通信システム用電磁マイクロリレーアレイ
    桑野博喜(NTT)
  5. 磁歪駆動によるマイクロ光スキャナー 
    藤田博之(東大)
  6. 2次元マイクロ磁気スキャナの実用化に関する考察
    上田譲、浅田規裕(日本信号)
  7. 配管検査無線μマシン用視線変更機構付CCDμカメラの開発
    須藤肇, 山田浩, 栂嵜隆, 貞本敦史(東芝)

 薄膜アクチュエータ、マイクロアクチュエータは、情報機器、医療機器の飛躍的な進展にとってキーデバイスとなる技術要素であり、各所で活発な研究開発が行われている。本研究会は、この技術要素と磁気工学との関わりを概観し、その開発動向を探って理解を深めることを目的として行った。

 はじめに、荒井氏は、電磁式マイクロモーターや光スキャナをはじめとする磁気マイクロアクチュエータの開発動向を紹介した。今後のさらなる発展には、厚膜プロセスや磁性薄膜専用の加工装置の充実が必要であること、また、非接触駆動、非接触エネルギー供給といった磁気駆動の特徴、利点の十分な活用が重要であることが指摘された。また、この様な特徴を生かした医療分野への応用例として同氏の研究グループが検討しているスパイラルブレードを使った自走型医療用マイクロアクチュエータの開発例が報告された。

 江氏、植松氏は、ハードディスク装置の高密度化に重要な技術要素である、複合サーボ式のヘッドポジショニング用アクチュエータに関して報告した。江氏は、切り欠き構造を持つ圧電方式のアクティブサスペンジョンを提案し、有限要素法による変位・振動解析や実験から、20Gb/in2の面密度に対して十分に大きなトラッキング変位と応答性が得られることを報告した。また、圧電式の特徴を生かしたセルフセンシングによる線形駆動法についても述べ、共振周波数近くまで線形駆動可能なことを示した。植松氏は、実際のヘッドポジショニングで問題となる各種振動外乱の要因を明らかにし、第一世代(<75kTPI)である電磁式やシェアーモード圧電変位を用いた圧電式ピギーバックアクチュエータの応答特性、ポジションエラーの評価結果について述べ、さらに低電圧・高速駆動をねらった第二世代(<115kTPI)の積層型、第三世代(<170kTPI)として検討されつつあるMEMS技術を用いた静電駆動型のHDDスライダーについても言及した。両氏ともコスト低減や構造の単純化など現実的な課題から圧電方式が有望なこと、今後は積層技術の改善、MEMS技術の導入などの検討が重要になることを指摘した。

 桑野氏は、MEMS技術をベースにした電磁駆動式薄膜アクチュエータからなる通信情報機器用のマイクロリレーアレーを報告した。試作した8×8マトリックスリレーの微小荷重下での接点抵抗や耐圧、応答特性などが報告され、従来リレーに比べて速度を一桁速く、体積を一桁小さくできること、画像切り替えやMDFなどに十分適用可能なことが示された。

 藤田氏は、MEMSベースの薄膜アクチュエータの最新動向を紹介した。実用化の見込みでは、大きな駆動力が要求されない光デバイスへの応用が有望で市場も大きいとのことである。また、同氏のグループが検討中の磁歪駆動2次元光スキャナーや磁性薄膜を用いた電磁駆動光スキャナーについて報告した。高速化という要求に対し10kHz以上の1次共振周波数が得られ、また、非接触という磁気駆動の特徴を生かして簡便な真空パッケージングを行いQが4倍向上することなどが示された。

 浅田氏は、シリコンベースの薄膜コイルと永久磁石を組み合わせたローレンツ力駆動による薄膜光スキャナーを報告した。実用化の観点から高速域での大振幅化、耐久性、歪みの補正方法などを検討し、試作レベルで共振周波数2.6kHz、±30度(光学角)振幅を実現したが、特定の共振周波数における振幅拡大には実用上の制限があることや2軸同時駆動を行った際、捻り梁に予想以上の応力がかかり折損するなどの問題点が指摘された。

 最後に須藤氏は、磁気駆動に拘らず、微小機械要素のシステム化例として、通産省の「マイクロマシン・プロジェクト」で開発されたCCDマイクロカメラを搭載した自走型管内検査システムを紹介した。トータルシステムを考えた場合の、アクチュエータ駆動方式の選択の難しさやエネルギー伝送方法とのマッチングの重要性が再認識された。

 以上、すべての講演において活発な議論がなされ、磁性薄膜・マイクロアクチュエータの有望な応用展開や実用化へ向けての課題などの理解が深まり有意義なものであった。また、暮れの多忙な時期にあって会場はほぼ満席となり、この分野への期待が伺える研究会であった。

(機技研 明渡)