メゾスコビックな技術磁化制御の将来への展望

日 時:平成7年3月7日
場 所:商工会館
参加者:63名

この研究会ではメゾスコピックな微少領域の技術磁化問題を 取り上げ,最近の磁気物理学でどこまで説明し,予測できるか, あるいは技術的にどこまで制御できるようになっているかを中 心に企画し,ご講演をお願いした.講演テーマは以下の通りである.

  1. メゾスコピツクな磁性材料の技術磁化 -ナノメータ微細組織制御の効果-
    藤森啓安(東北大)
  2. メゾスコピツクな系における磁気異方性と異方性分散
    宮島英紀,大谷義近(慶応大)
  3. 金属人工格子のバンド構造と垂直磁気異方性
    弓野健太郎,山本良一,浅野摂郎(東大)
  4. 磁歪のオリジンとメゾスコピック材料の磁歪
    深道和明(東北大)
  5. 薄膜ヘッドにおける磁歪の制御
    大橋啓之(NEC)
  6. 反強磁性交換結合とスピンバルプ
    猪俣浩一郎(東芝)
  7. メゾスコピック磁区構造の制御 -光磁気記録における磁区構造の制御-
    高橋正彦(日立)

 1.では,まずアモルファス軟質磁性材料の飽和磁化・保磁 力,磁気異方性,磁歪などがまとめて紹介され・優れた軟磁性 を得るためには内部応力の制御が重要であることが示された. 次に,ナノ結晶組職の制御について触れ,優れた高周波特性を 持つ新しいナノ結晶型材料の紹介があった.
 2.は,メゾスコ ピックな系の物理現象は系の大きさが直接関与することを特徴 とすることを指摘した上で,磁気的特性長を導入して・メゾス コピックな系の磁性を明快にまとめた興味ある講演であった. 異方性分散の問題はメゾスコピックな系の特徴を持つ典型的な 例であるとの指摘があった.メゾスコピックな磁性を考えると きの基準が与えられたように思われる.
 3.では, バンド計算に よって,CoやFeの表面とか Pt, Pd, Au, Ag, Cuなどと接し たときの界面の異方性エネルギーを計算し,垂直磁気異方性が 発生する場合が剛体バンド的に価電子数との関係で分かりやす く整理された.また,界面歪の影響も計算され,垂直磁気異方 性が起こるのはフェルミ面の電子がd軌道の xy やx2-y2の特 徴を備えたときであることが示された.
 4.では,磁性材料の磁 歪を線形のせん断磁歪と自発体積磁歪とに分け,種々の合金・ アモルファス,ラーベス相からインバー物質まで,多くの系の 巨大な磁歪効果や弾性定数が具体的に紹介された.光磁気記録 材料や金属人工格子の設計においては材料本来の磁歪効果が重 要であるとの指摘がなされた.
 5.は, パーマロイやセンダスト の薄膜磁気ヘッドの透磁率,磁歪・磁区構造の制御に関する技 術的な観点からの総合的講演であった.メッキ膜の組成変動を 回避する方法やアルミナ保護膜とかレジスト絶綾膜などからの 応力を緩和する方法など,膜の磁歪を制御する具体例が紹介さ れた.
 6.では,金属人工格子のGMPに関連して, 反強磁性交 換結合膜とスピンバルプ膜の磁化過程が実験と計算の両面から 系統的に考察された.また,Co/Cu, Co/Cu/FeNi/Cu多層膜 のNMRスペクトルの解析によって,界面近傍の原子層の組成 分布が階段状になっているほどMR効果が大きくなるなどを 示し,界面構造と磁性の評価の重要性が示された.
 7.では,メ ゾスコピツクな系の例として, 光磁気記録における磁区構造を 取り上げ,レーザー照射によってできる涙滴型磁区の形状や光 パルス照射磁界変調記録における矢羽根型磁区のテイル長が レーザーの出力とパルス幅,ディスク基坂の熱伝導度の改善な どによって制御できることが示された.

この研究会ではメゾスコピックな磁性といった聞きなれない 言葉を使ったが,最近,ナノ結晶組織・金属人工格子・超佃粒 子などの磁性やマイクロ磁区の研究が盛んになってきており, この辺でメゾスコピックな系の磁性を総合的に取り上げる必要 性を感じて企画した.講師の先生方には大変ご無理を言ってお 願いしたが, この企画の意図を充分くみ取っていただき心から お礼を申し上げたい.参加者も多く活発な議論が交わされ大変 盛況であった.この研究会がミクロまではいかないがマクロで もないメゾスコピックな微小領域の技術磁化過程の磁性を考え るきっかけとなることを期待したい.

(名大:松井正頭)