第43回日本磁気学会サマースクール(オンラインセミナー)

磁気は情報,通信,制御,エネルギー,資源,環境,医療,福祉などに利用され,半導体と並ぶ大きな産業規模をもっていますが,学校教育においては,必ずしも十分な教育がなされているとは言えない状況です。そのため,日本磁気学会(MSJ)では毎年「MSJサマースクール」として,磁気の基礎から応用の最先端までを網羅した講義を集中形式で行い,磁気の分野で活躍が期待される若手,中堅の方々を応援してきました。今年は6月に開催する予定でしたが,新型コロナウイルスの影響により開催を延期しておりました。この度,オンラインセミナーという新しい形でサマースクールを開催することが決定しましたので,ご案内いたします。本スクールは,磁気の基礎から応用における最近のトピックスまでを含め,幅広く,平易に学んでいただけるよう企画されています。また,オンラインのメリットを活かし,ご自宅,あるいは,学校などから遠隔的にご参加いただけます。是非このチャンスを逃さずご参加下さいますようご案内いたします。

*本講座は公益財団法人加藤科学振興会 令和2年度研究集会助成金を受けて実施されます。

日時:
2020年12月2日(水)~12月4日(金)
会場:
Web開催 (Zoom、ライブ形式)
会場URL等はご参加いただける方に別途電子メールにてご連絡いたします。
参加登録:
締め切りました
参加費:
受講料・テキスト代(消費税別、一度受けた参加費は返却いたしません)

正会員・賛助会員 34,000円
学生会員 20,000円 13,000円
(初等磁気工学講座から続けて受講の場合:12,000円)
一般非会員 48,000円
学生非会員 30,000円 23,000円
(初等磁気工学講座から続けて受講の場合:22,000円)

今年は学生会員の参加費を大幅に割引しております。また初等磁気工学講座から続けて参加される学生の方には,さらに割引があります。
電気学会の会員(正員,事業維持員および学生員)の方は,それぞれ相当する会員価格となります。
非会員の方は,参加登録時に会員登録して頂けますと,会員価格でご参加できます。

払込方法:
Paypal(クレジットカード決済),郵便振替,銀行振り込み
*Paypalを選択:登録のメールアドレスへ請求書をお送りいたします。
PayPal(ペイパル)メール請求書の決済手順
*郵便振替,銀行振り込みを選択:下記口座まで参加費をお振込みください。

郵便振替 00100-1-63028
銀行振込 三菱UFJ銀行 神保町支店
(店番013)普通預金2259640
口座名義 公益社団法人 日本磁気学会

お支払いの際は、参加者名でお振込みください。
それ以外の名義で振込の場合は、どなたの参加費かを必ず電子メールにてお知らせ下さい。

申込締切:
2020年10月30日(金) 11月19日(木)
問い合わせ先:
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台1-8-11 東京YWCA会館207号室
(公社)日本磁気学会
Tel:03-5281-0106, Fax:03-5281-0107
E-mail:msj@bj.wakwak.com
講義分野:
磁気工学の基礎, 磁気物理の基礎, 磁性薄膜, ソフト磁性材料, ハード磁性材料,
スピントロニクス, 磁気記録,光磁気工学, マイクロマグネティックス, 高周波磁気物性, 磁気イメージング, 生体磁気
プログラム・
講義概要:
12月2日(水)
午後 13:00~14:30 磁気工学の基礎(物性-材料特性-応用)

小山佳一(鹿児島大)

本サマースクールの導入として、(1)磁性体の種類、(2)自由原子の磁性、(3)局在磁気モーメント系の常磁性、(4)局在磁気モーメント系の強磁性、(4)材料特性と応用について概論するとともに、磁性や磁気工学のエッセンスと思われる幾つかのトピックスについても言及する。

14:45~16:15 磁気イメージング(磁気イメージングの基礎と応用)

竹澤昌晃(九工大)

本講義では、直接は目で見ることができない磁性体の磁化現象を可視化する方法、「磁気イメージング」について、その様々な可視化手法(ビッター法、磁気光学効果(ファラデー効果、カー効果)、磁気力顕微鏡(MFM)、スピン偏極走査トンネル顕微鏡、電子顕微鏡(ローレンツ顕微鏡、電子線ホログラフィ、スピン偏極走査電子顕微鏡)、放射光X線MCD、走査ホール素子顕微鏡など)の原理や特徴について紹介する。

16:30~18:00 磁気記録(磁気記録の基礎と将来展望)

田河育也(東北工大)

磁気記録(HDD)の高密度化技術の基礎を概説する。まず、主要磁性部品である記録/再生ヘッドと記録媒体について、基本構成と高密度化のために必要な開発事項を述べる。実はこれらの技術の単なる集積ではトリレンマと呼ばれる問題のため高密度化はできない。そこで、この課題のブレークスルー技術として現在検討されている、熱アシスト磁気記録、マイクロ波アシスト磁気記録、ビットパターンド媒体、二次元記録等について、基本コンセプトと開発課題を概説する。

12月3日(木)
午前 9:00~10:30 高周波磁気物性(高周波磁気物性の基礎と応用)

曽根原 誠(信州大)

RFインダクタのような高周波部品で磁性材料を用いる場合は、磁壁の移動が追従しなくなるため、多く利用される一軸磁気異方性を有する軟磁性材料の場合、磁化困難軸方向に磁界を印加し、磁化回転を用いる。また、磁性材料中には渦電流が生じるため、渦電流損を低減させるため、電気抵抗率が高い材料が望まれ、更には磁性材料にスリットを入れる必要がある。高周波部品に応用した際の工夫など実用面からも講義する。

10:45~12:15 スピントロニクス
(スピントロニクス材料・デバイスの基礎)

三輪真嗣(東大)

スピントロニクスとは、電子の電荷とスピン自由度を利用した新規電子デバイス創成を狙う分野である。
本講義は様々なスピントロニクス現象の本質を理解するために必要な基礎知識の習得を目的とする。
具体的には磁気抵抗効果やスピントランスファートルクの理解のためにスピン蓄積を、新規スピントルクであるスピン軌道トルクや電圧トルクの理解のためにスピン軌道相互作用の概念を学ぶ。 これらを利用したデバイスの基礎に対する理解も深める。

午後 13:15~14:45 磁気物理の基礎(磁性と電子構造)

土浦宏紀(東北大)

この講義では、金属磁性が生じるしくみを電子論の立場から理解することを目的とする。はじめに、ごく簡単な理論的模型を用いて強磁性や反強磁性等が生じる様子を説明し、続いて、物質の電子構造・電子状態がいかにその磁性の発現に影響を与えるかという点について解説する。最後に、実際の材料を理論的に解析するための強力なツールである第一原理計算ソフトウェアを紹介し、その簡単な使用法についても紹介する。

15:00~16:30 ハード磁性材料(永久磁石の基礎と応用)

槙 智仁(日立金属)

永久磁石はモータや発電機に多く用いられている。近年の温室効果ガス排出削減の動きやエネルギーの需要増加を受け、自動車の電動化や風力発電の普及、産業用・家電用モータの低消費電力化のために永久磁石の高性能化・低コスト化が強く求められている。
本稿では、永久磁石において重要となる性能指標を説明するとともに、主要な永久磁石についての特徴・製法などを最近の技術動向を交えて紹介する。

16:45~18:15 光磁気工学(光磁気の基礎と応用)

安達信泰(名工大)

磁気光学効果は、磁気の担い手である電子と可視光を含む電磁波との相互作用によっておこる現象であり、19世紀のFaradayの発見から始まり、量子論を経て理論研究が進み、現在では計算シミュレーションでかなり定量的に扱えるようになってきた。磁気光学効果はIT社会をささえる光通信に不可欠な光アイソレータに利用されており、このほか様々な分野に応用されている。本講義では、磁気光学効果と磁気光学材料について基礎と応用を述べる。

12月4日(金)
午前 10:30~12:00 マイクロマグネティックス(微細領域の磁性とデバイス応用)

小峰啓史(茨城大)

マイクロマグネティックスは、磁気記録やスピントロニクスデバイスなど微小領域におけるスピンの挙動を解析する標準的な手法となっている。本講義では、マイクロマグネティックスの基礎方程式、実効磁場、スピンに働くトルクについて説明する。シミュレーション事例を概観しながら、デバイス設計や新現象の理解にどのように用いるかを学ぶ。

午後 13:00~14:30 磁性薄膜(磁性薄膜の基礎物性と評価手法)

加藤剛志(名大)

磁性材料は薄膜化、多層化することでバルク材料にはみられない特異な物性を発現し、これらを利用することで、磁気ストレージ、固体磁気メモリ、高感度磁界センサの高性能化が図られている。本講義では磁性薄膜の作製方法、評価方法について、その原理と特徴を述べる。さらに、磁性薄膜特有の物性である垂直磁気異方性、層間相互作用、巨大磁気抵抗効果などを、そのメカニズムを含めて説明する。

14:45~16:15 ソフト磁性材料(軟磁性材料の基礎と応用)

遠藤 恭(東北大)

本講義では,磁化し易く磁気異方性が低いと定義されるソフト(軟)磁性材料について基礎的な観点からそれらの静的磁化過程、磁気異方性および動的磁化過程(周波数特性)を、また、デバイス応用の観点から材料形状により異なることや材料の種類について紹介する。

16:30~18:00 生体磁気(生体と磁気,磁気医療の基礎と応用)

関野正樹(東大)

磁界は体の深いところまで到達するため、磁界の利用によって鮮明な断層撮影や脳機能計測が可能になる。また、脳へパルス磁界を与えて脳内に生じた渦電流によりニューロンを刺激する手法が、神経系の検査や治療に利用されている。これらの技術の利点は、電界や放射線などを使う技術に比べて、侵襲が低いことにある。磁気を用いた医療機器の主なものについて、原理や特徴を中心に説明し、近年の動向も紹介する。また、磁界が生体に与える作用についても概説する。

チーフオーガナイザ:
 海住英生(慶大)
サブチーフ:
 中山裕康(物材機構)
オーガナイザ:
植田浩司(パナソニック), 岡田泰行(三菱電機),近藤浩太(理研),
山下昂洋(長崎大), 渡邊佳正(三菱電機)