110.01

分野:
スピンエレクトロニクス
タイトル:
スピン波の伝播における波数の制御、及びスネルの法則の確認
出典:
“Real-time observation of Snell’s law for spin waves in thin ferromagnetic films”, Appl. Phys. Express. 7, 053001 (2014).
 
 
概要:
膜厚がステップ状に変化する強磁性細線中を伝播するスピン波を実時間測定し、光の伝播と媒質の屈折率の関係を記述するスネルの法則がスピン波の場合にも成り立つことを初めて実証した。
 
 
本文:
近年、スピン波(マグノン)を情報の処理、記憶、伝送などに用いる技術が提案されており、このような応用を目指した研究分野が「マグノニクス」という名称で注目を集め始めている。実用化のためにはスピン波の性質(波数など)を制御する方法を確立する必要があるが、現状はまだスピン波の伝播に関する物理を一つ一つ確立していく段階にあると言える。今回大阪大学の田辺らは、光の伝播における波数と媒質の屈折率の関係を記述するスネルの法則がスピン波の場合にも成り立ち、例えば強磁性細線の膜厚をステップ状に変化させることによってスピン波の波数を制御できることを実験で確認することに成功した。
本研究ではNiFeからなる細線が試料として用いられており、当細線においてはその長手方向に沿って膜厚が100 nmから50 nmへとステップ状に変化している。膜厚が100 nmの領域にてパルス電流磁場を用いてスピン波を励起し、膜厚50 nmの領域に到達したスピン波をオシロスコープで検出する。スピン波の分散関係は膜厚に依存するので、形成したステップは伝播するスピン波に対して分散関係の異なる境界として作用することが期待される。実験において、膜厚が100 nmの領域において波長が20μmのスピン波を励起すると、膜厚が50 nmの領域においては20μmのスピン波の到達は観測されず、その半分の10μmのスピン波の到達が観測された。これはスピン波においても上述のスネルの法則が成立することを意味している。
本研究によってスピン波の波数を構造によって制御できることが確認されたことから、「マグノニクス」における新たな応用の可能性が開けることが期待される。

(東北大 深見俊輔)