132.01

【分野】スピンエレクトロニクス

【タイトル】反強磁性体/強磁性体積層膜において外部磁界を用いないスピン軌道トルク磁化反転の実証に成功

【出典】
Nature Materials, doi:10.1038/nmat4566
Magnetization switching by spin-orbit torque in an antiferromagnet-ferromagnet bilayer system

【概要】
東北大学の深見らは、反強磁性体/強磁性体積層膜を用いて、外部磁界を用いることなく反強磁性体中で生成されたスピン流により強磁性体の磁化を反転させることに成功した。また、反強磁性層の膜厚を適切に制御することで、強磁性層において反転する磁化の量をアナログ的に制御出来ることを示した。

【本文】
スピン軌道トルクを用いた磁化反転は、将来の低消費電力集積回路を実現するための基盤技術として期待されている。これまでスピン軌道トルクを用いた磁化反転では、PtやTaなどの非磁性重金属層に電流を流すことによってスピン流を生成し、その隣に形成された強磁性体にトルクを与えて磁化を反転させてきた。その際、垂直磁化容易軸を有する強磁性体を用いた場合には、磁化を反転させるために外部面内磁界が必要であり、その点が集積回路応用への懸念点となっていた。今回、東北大学の深見らは、非磁性重金属層の代わりに反強磁性体であるPtMnを用い、垂直磁化容易軸を有するCo/Ni多層膜の面内方向に交換バイアス磁界を印加することで外部磁界を用いないスピン軌道トルク磁化反転の実証に成功した。また、PtMn層の膜厚を適切に制御することで、Co/Ni多層膜において反転する磁化の量をアナログ的に制御出来ることを示した。彼らは、交換バイアス磁界の有無で磁化反転機構が異なることを実験的に示し、アナログ的な動作が交換バイアスと関連していることを示唆する結果を得ている。このようなアナログ的な動作を示すデバイスはシナプスの機能を模することができるために、脳型情報処理への応用も期待される。
以上のことから、今回の報告はスピントロニクスを用いた低消費電力集積回路や脳型情報処理の実現に寄与する結果であり、今後の発展が大いに期待される。

(東北大学 佐藤英夫)