218.01

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【分野】磁性材料

【タイトル】
らせん磁性体のキラリティーを利用するメモリの室温動作を実証

【出典】
・Room temperature chirality switching and detection in a helimagnetic MnAu2 thin film
Hidetoshi Masuda, Takeshi Seki, Jun-ichiro Ohe, Yoichi Nii, Hiroto Masuda, Koki Takanashi, Yoshinori Onose, Nature Communications 15, 1999-1-8 (2024)
DOI:10.1038/s41467-024-46326-4
URL:https://www.nature.com/articles/s41467-024-46326-4
・東北大学(2024年プレスリリース)
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2024/03/press20240308-01-temperature.html
・東邦大学(2024年プレスリリース)
https://www.toho-u.ac.jp/press/2023_index/20240308-1350.html

【概要】
磁気モーメントがらせん状に整列したらせん磁性体のねじれの方向「キラリティー」を室温で制御・検出可能なMnAu2薄膜を開発した。キラリティーを情報ビットとする磁気メモリは高集積性と高い堅牢性を併せ持つ次世代記憶素子の候補となるため、デバイスの小型化、高耐久化につながることが期待される。

【本文】
磁気抵抗メモリ(MRAM)などの磁気記憶素子では、強磁性体の磁化方向により情報を記憶するが、強磁性体からの漏洩磁場が情報ビット間の干渉を招き、これが超高集積化に向けた原理的な障害となると指摘されている。
東北大学金属材料研究所の増田英俊助教、関剛斎教授、小野瀬佳文教授、東邦大学の大江純一郎教授らの共同研究グループは、磁気モーメントがらせん状に整列したらせん磁性体に着目し、らせんの巻く方向の自由度「キラリティー」を室温で制御・検出可能なMnAu2薄膜を開発した。
らせん磁性体は強磁性体と違い、各磁気モーメントがつくる磁場が打ち消し合うことでマクロには漏洩磁場をつくらないため、キラリティーを情報のビットとする磁気メモリが出来れば高集積化に繋がることが期待される。しかしながら、磁場をつくらないという特徴のために、キラリティーの書き込み・読み出しには技術的なハードルがあった。また、らせん磁性体の多くはらせん磁性相となる磁気転移温度が室温以下であり、低温環境が必要とされてきた。研究グループは、室温で安定ならせん磁性体であるマンガン金合金のMnAu2に着目し、高品質のMnAu2単結晶薄膜を作製した。そして、室温において、弱い磁場中で電流パルスを印加することにより、キラリティーを繰り返し反転することに成功した。さらに、MnAu2とPtを積層させた素子を作製し、印加電流に対して横方向電圧を測定することで磁場なしでもキラリティーを検出できることを示した。これらの実験より、らせん磁性体のキラリティーメモリが室温かつ簡便な方法で書き込み・読み出しできることが実証され、らせん磁性を用いたスピントロニクスの可能性が開かれた。
(東北大学 関剛斎)

図(左)開発したらせん磁性体メモリの概念図。キラリティー(右巻き・左巻き)を情報ビットとして用いる。(右)らせん磁性メモリ素子のイメージ図。

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