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第168回研究会報告 第26回スピンエレクトロニクス専門研究会報告

「スピン流とデバイス応用」

日時:2009年11月2日(月) 10:30~17:30
場所:東北大学金属材料研究所
参加者:59名

 近年のスピンエレクトロニクス研究の発展の中で、スピンの流れ「スピン流」という新たな概念が提唱され、その物理の解明を目指した研究が精力的に行われている。 また、電荷電流とは異なる、スピン流特有の新規な機能・デバイスの探求も進み、MRAM、スピントランジスタ、スピントルクオシレータ、スピンダイスといったスピンデバイスの開発が展開しつつある。今回の研究会ではスピン流とそのデバイス応用に関する第一線の研究者が一堂に会し、活発な議論が交わされた。以下に各講演の概要を示す。

講演内容:

  1. 「スピントロニクス・総論:電流とスピン流 -新しい電磁気学の建設に向けて-」
    前川禎通(東北大)

     ナノサイズの磁気デバイスで重要な働きをするスピン流、特にスピントルクとスピン起電力が詳細に解説された。さらに、スピン及びスピン流を取り込んだ電磁気学の発展と、そこから導かれるスピンエレクトロニクス・デバイスについて概観した。
     

  2. 「電界効果スピントランジスタに向けたスピン電界制御」
    新田淳作(東北大)

     化合物半導体のスピン流制御ではスピン軌道相互作用が重要な働きを果たす。スピン干渉デバイスを用いたゲート電界によるスピン回転制御の実験と、細線構造を用いたスピン緩和抑制方法について紹介し、永久スピン旋回状態に関する最近の進展を示した。
     

  3. 「スピン機能MOSFETとその集積回路応用」
    菅原 聡(東工大)

     既存のMOSFETにスピン機能を付加したspin-MOSFETの紹介がなされた。ソース・ドレインに強磁性材料を用いた素子と、MOSFETにTMR素子を組み合わせた疑似spin-MOSFETについて、作成法や素子特性が述べられると共に、実際の回路応用、特にパワーゲーティングシステムについての解説が行われた。
     

  4. 「ナノ狭窄磁壁型スピンバルブ薄膜のスピントルクマイクロ波発振」
    土井正晶(東北大)

     ナノ狭窄電子系構造体を用いたスピントルクマイクロ波発振は狭窄領域での磁壁の運動に起因するもので、非常に鋭い共鳴ピークが得られている。そのダイナミクスをシミュレーションと合わせて詳解した。また、位相同期現象や、デバイス応用への可能性について言及した。
     

  5. 「MgO-MTJおよびCPP-GMRにおけるスピントルク発振 -発振の高出力化および高周波化に向けて-」
    関 剛斎(阪大)

     MgO強磁性トンネル接合(MTJ)および反平行結合膜を有する巨大磁気抵抗素子におけるスピントルク発振について述べた。MgO-MTJの発振については垂直磁場を印加することで高周波スペクトルの形状を改善できることを示した。また、反平行結合膜の利用により発振周波数を高周波化できることを明らかにした。
     

  6. 「スピンダイス -磁気抵抗素子を用いた物理乱数発生器-」
    福島章雄(産総研)

     著者らが開発を進める、トンネル磁気抵抗素子におけるスピン注入磁化反転を用いた物理乱数発生器「Spin dice」が紹介された。この乱数発生器は、磁化反転の確率を直接電流でコントロールすることにより乱数を生成するもので、高速・不揮発・集積可能という特徴を持つ乱数生成器であり、既存の乱数発生器に対して大きな優位性を持つことが示された。
     

  7. 「高集積MRAMに向けた、良好なスケーラビリティーをもつ垂直磁化方式MTJの開発」
    與田博明(東芝)

     MRAMにGbit級のScalabilityを持たせるため開発が進む、垂直磁化方式のMTJが紹介された。その結果、50μA程度の低電流でのスピン注入磁化反転に成功し、また微細化と共に反転電流値が低減することも確認された。さらに熱安定性に関する議論もなされ、原理的にはGbit級のScalabilityを持たせることが可能であることが示された。
     

  8. 「SoC混載に適した垂直磁化磁壁移動型MRAM」
    石綿延行(NEC)

     垂直磁化膜を用いた磁壁移動型MRAMは不揮発高速混載メモリとして開発が進められている。書き込み電流は0.2mA、書き込み時間は2ns以下、さらに、書き込み電流と熱安定性が独立でありスケーリングに好適であることが確認された。また、セルのレイアウトも示され、メモリ素子としての良好な特性が示された。
     

(文責:長浜太郎 (産総研))