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第115回応用磁気学会研究会報告(第45回超伝導マグネティクス専門研究会と共催)

「酸化物セラミックスの新物性と新機能」

日 時:2000年5月23日(火) 13:00 ~17:25
場 所:商工会館
参加者:96名

プログラム:

  1. 「新しい酸化物セラミックス」 
    森下忠隆(超工研)
  2. 「機能性酸化物としての高温超伝導体」
    山本文子(超工研)
  3. 「アルカリイオン電池材料の物性」
    留野 泉(東芝)
  4. 「酸化物透明電極材料の現状と課題」
    細野秀雄(東工大)
  5. 「熱電変換材料としての酸化物」
    村山宣光(名工研)
  6. 「酸化物巨大磁気抵抗材料の現状と機能性酸化物の将来」
    古川信夫(青学大)

 酸化物セラミックスは,誘電体や磁性体のような機能性材料として利用されてきた。特に最近では,高温超伝導や巨大磁気抵抗のような新しい物性に伴う新しい機能が注目されている。本研究会では,高温超伝導,アルカリイオン電池,透明電極,熱電変換,巨大磁気抵抗の各テーマで最近注目されている 酸化物の現状と展望を機能性酸化物セラミックスという視点で総合的に議論した。

 森下氏は,イントロダクションとしてセラミックスの定義・特徴などの総論から現在,アメリカ物理学会で注目されている最先端の物質科学におけるセラミックスの役割を幅広く論じた。

 山本氏は,高温超伝導体の酸化物という側面に注目し,酸素量の制御による物性の制御方法として様々な化学的手法を紹介した。またその例として水銀を含む銅酸化物の物性を酸素量で制御した最近の成果を紹介した。

 留野氏はリチウム電池材料として用いられているLi-Co-O系材料,Li-Mn-O系材料の物性を,主に結晶構造・磁気構造の観点から紹介した。Liを含む化合物は,その不定比性のため作製条件によって結晶構造も磁気特性も異なるが,彼らの試料では明瞭な磁気相転移が観測された。

 細野氏は,P型の透明電極をSr-Cu-O系の酸化物で設計し,N型酸化物ZnOとのPN接合を作製することに成功した。透明電極材料はこれまでN型しかなくP型を合成し,接合を形成し,その発光に成功したのは大きな成果である。まだGaNの発光強度には及ばないものの,機能性酸化物のバリエーションが広がったことは意義が大きい。

 村山氏は,酸化物による熱電変換材料の探索とその素子設計の現状についてのべた。酸化物熱電変換材料は,日本が欧米をリードしている分野であること,また予備的ではあるがNiOとSr-Pb-O系酸化物セラミックスだけで素子を作製しつつあることを示した。

 古川氏は,マンガン酸化物に代表される巨大磁気抵抗材料の物性とその応用について明解な解説を行った。系が金属的な場合と絶縁体的な場合,均一な場合と不均一な場合に分けて磁気抵抗現象を分類した。

 全体を通じて,立見がでるほどの盛況ぶりであった。講演も,略号や高度な専門用語を使用しない異分野の人々を配慮したものであった。酸化物の機能の豊富さを再認識しただけでなく,新しい物質,新しい物性,新しいプロセスが融合した新機能がこれらの研究から生まれて来ることを予感させる研究会であった。


早大 寺崎一郎