磁気・光磁気記録(初級)

Question
Q 1.
パソコンの記録装置として、ハードディスクを使っているのはなぜですか?
Q 2.
パソコンを使っていると「カリカリ」という音が聞こえます。
ハードディスクが壊れているのでしょうか?
Q 3.
クレジットカードなどの情報は、どうやって記録や読みとりをするのですか?(1)
Q 4.
クレジットカードなどの情報は、どうやって記録や読みとりをするのですか?(2)
Q 5.
MRAM(Magnetic Random Access Memory)とはどんなメモリですか?

Answer

Q 1.
パソコンの記録装置として、ハードディスクを使っているのはなぜですか?
A 1.

音楽、ビデオの映像、写真、文字やイラストなど、いろいろな情報を記録するのに様々なメモリが使われています。でも、残念ながらオールマイティなものは、まだ発明されていません。
たとえば今、世の中にあるもので一番壊れにくいものは、飛行機のフライトレコーダと呼ばれるもので、これはたとえ事故で飛行機が燃えてしまったり、墜落して地上に激突したりしても、記録された情報は壊れません。事故が起った後で、事故の原因などを調べるのに使います。しかしながら、書かれた情報を読みとるのに何日もかかったり、書いたり読んだりするのにものすごくお金がかかったりします。また、ほんの少しの情報しか記録できないので不便です。

結局のところ、(1)情報を何度でも繰り返し記録したり消去したりできる、(2)書いてある場所を探したりするのに待たされてイライラしたりしない、(3)欲しい情報をたくさん貯め込むことができて、簡単な構造で記録や再生できる、(4)誰もが買える値段で作ることができる、(5)その割には滅多に壊れない・・・などの理由で、今のハードディスクが使われています。

とは言っても、ハードディスクは円盤状の磁気ディスクを超高速で回し、それに磁気ヘッドを10万分の1ミリまで近づけて情報を記録しますので、まるでジャンボジェット機が地上1ミリを超高速で飛んでいるようなものです。ですから、たまに墜落して壊れることはあります。
これがクラッシュと呼ばれる現象で、使い方にもよりますが、 2年から5年に1度くらいのクラッシュは起きると考えておかなくてはなりません。いつ起きるかはなかなかわかりにくいので、大切な情報は定期的にバックアップを取っておくようにしてください。

回答作成:平成16年度MSJ企画委員会

Q 2.
パソコンを使っていると「カリカリ」という音が聞こえます。
ハードディスクが壊れているのでしょうか?
A 2.

ハードディスク内部写真
写真提供:(株)富士通

パソコンの中には、文字、写真、音楽、ビデオなど色々な情報を記録/保存しておくハードディスクが入っています。 右の写真はハードディスクの蓋を開けて中を見たものです。 1秒間に70-120回の速さで回るモータに、磁気ディスク媒体と呼ばれる円盤が取り付けられています。

円盤の直径は大きいもので約9 cm(ノートパソコンには、直径約6 cmや4.5 cmのもっと小さなものが使われています)で、円盤の表面は磁石の性質を持った非常に薄い金属膜 (磁気記録膜) で覆われています。 円盤の上には、この磁気記録膜に情報を書き込んだり読み出したりする磁気ヘッドが乗っています。 磁気ヘッドは約10万分の1 mm(インフルエンザウィルスの約10分の1)という極めて小さな隙間を保って円盤の上に浮いており、半径方向に行ったり来たりして情報の書き込みと読み出しを行います。

磁気ヘッドは、今いる位置から目標の位置まで全力疾走したり、目標の位置に近づくと急ブレーキをかけて止まったり、を繰り返します。 その時に出る音が「カリカリ」という音に聞こえるのです。 磁気ヘッドの動く速さや動き方を調節することで、この「カリカリ」音を小さくすることができます。 最近のパソコンには、「カリカリ」音がほとんど聞こえないようにした静かなハードディスクが入っています。

回答作成:平成16年度MSJ企画委員会

Q 3.
クレジットカードなどの情報は、どうやって記録や読みとりをするのですか?(1)
A 3.

クレジットカードやキャッシュカードなどのカードには磁気で情報を記録する磁気カードと、ICチップに情報を記録するICカードの二種類があります。

磁気カードの場合には、カードの表面や裏面の黒や銀色の帯状になっている部分(磁気ストライプ)に磁性体がついていて、ここに情報が記録されています。

情報の読み取りや書き換えはカードリーダーを備えた機械で行います。カードリーダーの中には磁気ストライプからの磁界を読み取る磁気ヘッドがあり、このヘッドの上にカードを接触させながらスライドすることで情報を読み取ることができます。磁気ストライプに記録できる情報は72文字程度ですが、多くの場合、磁気カードに暗証番号が記録されているわけではなく、暗証番号の照合などの処理はすべてカードリーダーにつながっているホストコンピューターが行ないます。

ただし、磁気ストライプから不正に情報を読み取られたり偽造されたりする危険性がないわけではありません。このため、従来磁気カードであったクレジットカードやキャッシュカードに、よりセキュリティに配慮したICカードが導入されてきています。→ (2)ICカードを参照。

回答作成:平成16年度MSJ企画委員会

Q 4.
クレジットカードなどの情報は、どうやって記録や読みとりをするのですか?(2)
A 4.

クレジットカードやキャッシュカードなどには、情報やプログラムを記録するためのICチップが埋め込まれたICカードが用いられるようになってきています。

ICカードには、表面に金色の電極が見える接触式カードと、表面に電極がない非接触式カードがあります。 電池は内蔵していませんので、接触式カードの場合は電極からの電流で動作し、情報も電極を通して送受信するのに対して、非接触式カードの場合はカードリーダーに発生している弱い磁界にかざすことで発生する電流によりICを駆動します。 このときカード内に埋め込まれたアンテナに発生する電磁波を使ってカードリーダーとの間で情報をやりとりします。 ICの中には暗証番号も記録されており、ホストコンピューターとの通信をすることなく、カードリーダーとの間で瞬時に照合が行なわれます。

ICカードは不正に情報を読み取ったり偽造したりすることがまず不可能ですので、セキュリティの高いカードです。 クレジットカードだけでなく鉄道の定期券や身分証明カードなど様々な分野に利用が広がってきています。

この他、身近なカードには、プリペイドカードやポイントカードなどに用いられているPETカードがあります。薄いシート状のカードの全面に磁気による情報が記録できる磁性体がコーティングされているものや、表面の感熱層に印字が可能なものがあります。

回答作成:平成16年度MSJ企画委員会

Q 5.
MRAM(Magnetic Random Access Memory)とはどんなメモリですか?
A 5.

電気的に情報を素早く取り出せるというRAMの特徴と長期間情報を保持できる磁気記録の特徴を併せ持つメモリです。 従来のRAMとは異なり、微小な強磁性体の磁気分極の向きにより情報を保持します。情報の書き込みはビット線とディジット線の交点に生じる磁界によって行い、磁気トンネル接合(Magnetic Tunnel Junction; MTJ) の電気抵抗を利用して情報の読み出しをおこないます。

現在広く用いられているDynamic RAMではキャパシタンスに蓄えた電荷として情報を保持していますが、電荷が時間とともに漏れてしまう(情報の揮発)ためリフレッシュ動作と呼ばれる再書き込みを定期的におこなう必要があります。 大規模容量のRAMではこの動作に要する時間と消費電力が無視できなくなり、不揮発性のRAMが強く要望されています。

いくつか候補として考えられている不揮発性メモリのうち、MRAMが高速かつ集積化に最も優れており次世代の汎用記録装置として期待されています。

回答者: 東京工業大学 近藤 剛

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