56.06

分野:
スピンエレクトロニクス
タイトル:
第24回スピンエレクトロニクス専門研究会「垂直磁化とスピンエレクトロニクス」
出典:
NECのプレスリリース
(http://www.nec.co.jp/press/ja/0906/1705.html)
概要:
 2009/1/16名古屋大学にて開催、参加者は24名であった。今回の研究会は,垂直磁化とスピンエレクトロニクスをテーマに取り上げた.磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)素子において,垂直磁化膜がスピン注入磁化反転に必要な電流密度の低減や,記録の熱擾乱耐性の向上に有利だとの議論があり今回のテーマが選ばれた.本研究会では,MRAMへの応用からスピンダイナミックスなど基礎的な研究まで発表され,活発な議論がなされた.
本文:
 

  1. 「垂直磁化方式スピン注入MRAMとそのスケーラビリティー」 與田博明(東芝)
    垂直磁化方式のスピン注入MRAMは6F2の微細なセルサイズの実現が可能なので,書き込み電流値を30-40μA程度まで低減すればギガビット級のメモリが実現できる.今回垂直磁化方式のMTJを用い,Δ/kBT=56(T=室温)の熱安定性をもつ記憶層を50μAの電流値でスピン注入反転させることに成功した.さらに,40nm直径まで微細化とすれば30μA強の書き込み電流値が期待でき,ギガビット級も実現可能である,微細化により書き込み効率が向上することを計算で示し,非常に良好なScalabilityも有することが明確となった.
  2. 「垂直磁化膜における磁壁電流駆動とMRAMへの応用」 ○深見俊輔1,鈴木哲広1,永原聖万1,大嶋則和1,石綿延行1, 谷川博信2,小山知弘2,山田元2,葛西伸哉2,小野輝男2 (1NEC、2京大)
    高速混載メモリの不揮発化を目指した垂直磁化磁壁移動型MRAMが提案され,基礎的な実験結果が示された.はじめに垂直磁化膜は面内磁化膜と比べて磁壁駆動の閾値電流密度が大幅に低減されることが理論的に説明され,次にCo/Ni細線における制御性の高い磁壁電流駆動の実験結果が示され,閾値電流密度,磁壁移動速度などの測定結果が報告された.最後に書込み電流や速度,熱安定性などのメモリ素子の基本特性が紹介された.
  3. 「垂直磁化 FePt を用いたスピンホール効果の研究」 高梨弘毅(東北大)
    スピンホール効果は,電流とスピン流との新しい変換手段として,スピンエレクトロニクス分野で最近注目を集めている.講演者のグループは,L10-FePt 垂直磁化膜とAuとを組み合わせた面内構造素子において,室温で巨大なスピンホール効果の観測に成功した.垂直磁化膜を垂直スピン注入源として利用することにより単純な素子構造でも観測が可能になること,巨大なスピンホール効果のメカニズムは不純物によるスキュー散乱であることが述べられた.
  4. 「垂直磁化膜におけるスピン注入磁壁移動シミュレーション」 ○仲谷栄伸1,小野輝男2(1電通大、2京大)
    マイクロマグネティックシミュレーションを用いて垂直磁気異方性を有する磁性細線でのスピン電流による磁壁移動現象を調べた.外的なピン止め効果がない場合は,磁壁移動に必要な閾電流は細線の幅や厚さに依存することが以前よりシミュレーションにより指摘されていたが,外的ピン止め効果の種類によっては閾電流の細線幅依存性がなくなることを示した.
  5. 「マイクロ波磁界を用いた垂直磁化膜パターンのスイッチング磁界低減」 ○能崎幸雄,大田正直,立石健太郎,成田直幸,白石壮馬,田中輝光,松山公秀(九大)
    1 Tbit/in2超の次世代垂直媒体の書き込み方法として注目されているマイクロ波アシスト磁化反転(MAMR)に関する研究成果が報告された.単磁区モデル計算により,垂直磁化ドット特有の磁化ダイナミクスと必要なダンピング定数の条件を明らかにした.さらに,ネットワークアナライザを用いた磁気ドット1個のMAMR検出実験についても詳細な報告があり,最後に垂直磁化膜のMAMR実現に向けた検討が紹介された.

(名大 綱島滋)