53.04

分野:
スピンエレクトロニクス
タイトル:
第23回スピンエレクトロニクス専門研究会「バイオ・分子スピントロニクス」
日時:
2008年12月8日
場所:
京都大学・時計台記念館国際交流ホールI
参加者:
21名
本文:
 
近年、徐々に関心を集めているバイオスピントロニクス・分子スピントロニクスを対象にして特に今回はIEEE Distinguished LecturerであるProf. Paulo Jorge Freitasを招聘してバイオ関連のレビューおよび最新の話題を、国内から4名の講師を招聘して分子スピントロニクスの最新の進展や展望を広く議論する形で研究会を開催した。なお、講演などは英語で行った。 参加者は多くはなかったものの質疑応答では様々な角度から突っ込んだ議論がなされ、この新しい研究分野への期待も感じられた。2009年2月にはユタ州ソルトレイクシティにおいて有機スピントロニクスの大きなワークショップが開催される(これが2回目で、1回目は2007年9月にボローニャで開催された)が、発表件数も大幅に増え、また日本からの講演者も同様に大幅に増えている。今後、日本勢のプレゼンスをさらに高めるためにも多くの方の参入とお力添えをお願いする次第である。

1.「Spintronic platforms for biological and biomedical applications」 P.P. Freitas (INESC-MN, Univ. Te’cnica de Lisboa)
 バイオスピントロニクスにおける最新の話題を広く講演いただいた。特に磁気ナノ粒子などをマーカーとしたDNAなど単一分子のセンシング・分子配向、さらに肉牛飼育の際に使用する薬剤がどの程度牛肉に残留しているかをセンシングする最新のデバイスなど氏のグループの最新の研究成果について広く紹介していただいた。

2. 「Magnetoresistance of layered and lateral sandwich structures composed of ferromagnetic metals and organic semiconductors」 多田博一(阪大)
 酸化物磁性体(LSMO)を用いた分子スピンバルブの作製というユニークな切り口から、Alq3、ペンタセン、フラーレン、TiOPC、TPDなど様々な分子を用いた磁気抵抗効果について報告がなされた。特にp型有機半導体とn型有機半導体を介した場合に前者では負の、後者では正の磁気抵抗効果が発現するなど興味深い結果が報告された。

3. 「Luminescenece properties of the organic light-emitting devices with a ferromagnetic cathode」 仕幸英治(北陸先端大)
 有機物へのスピン注入を円偏光の観測によって示す、という独自のアプローチで近年積極的に研究を進められている氏の研究の最新の結果について講演いただいた。よく用いられるAlq3だけではなく、Ir(ppy)3などの新しい材料系を用いてスピン注入実験を行っている点が注目すべき点である。

4. 「Magnetoresistance and spin current detection in nano-carbonaceous molecules」 白石誠司(阪大)
 フラーレンを用いた巨大磁気抵抗効果の観測とその背景の学理の考察、分子性半導体へのスピン注入の難しさ、グラフェンを用いる必然性とグラフェン系スピンバルブ中での室温磁気抵抗効果の観測、さらに金属系スピンバルブを凌駕できるスピン偏極率のバイアス依存性など、ナノカーボン系分子を用いたスピン素子における最新の結果が報告された。

5. 「Molecule-based coexisting systems of conductivity and magnetism realized with cross-conjugated organic donor radicals」 松下未知雄(名大)
 局在スピンを有する分子(ESBN)2ClO4を繋いだリンク構造において局在スピンと伝導スピンとのp-p相互作用を磁気抵抗効果の観測によって行う、という興味深いアプローチが紹介された。このような有機ラジカル系における磁気抵抗効果の観測は初めてであり、現在は20 Kで効果は消失するものの、分子中のスピンの操作という点でこれからの進展が非常に期待される研究テーマの詳細が議論された。  

(阪大 白石誠司)