51.02

分野:
薄膜・微粒子
タイトル:
大きな負の熱膨張率を持つ磁性ナノ粒子
出典:
X.. G. Zheng, H. Kubozono, H. Yamada, K. Kato, Y. Ishiwata, and C.N. Xu, “Giant negative thermal expansion in magnetic nanocrystals,” Nature Nanotechnology [Advanced online issue 19 October 2008, DOI: 10.1038/nnano.2008.309] (2008)
概要:
  佐賀大学、産業技術総合研究所、理化学研究所の研究チームは平均直径約5nmの酸化銅(CuO)ナノ粒子の熱膨張率を詳細に解析し、反強磁性転移温度(約210K)よりも低温(175K以下)で熱膨張率が大きな負の値(-1.1×10^-4/℃)となることを発見した。
本文:
 
1896年のC. E. Guillaume(ギヨーム)によるインバー合金の発見以来、磁性を用いた熱膨張率の制御は盛んに研究されてきた。熱膨張率の小さな材料は温度による寸法変化を嫌う精密機械などの素材として非常に有用であり、幅広い分野で応用されている。これまではバルク材料の熱膨張率が主に研究されてきたが、ナノマシーンなどナノサイズの精密機械を実現するためには、ナノ材料の熱膨張率の研究を行うことが今後重要となってくる。

 佐賀大学理工学部の鄭旭光教授、産総研生産計測技術研究センターの徐超男研究チーム長、山田浩志研究員、理研放射光科学総合研究センターの加藤健一研究員らの研究チームは、バルクの結晶をボールミルで粉砕することにより平均直径が約5nmの酸化銅(CuO)ナノ粒子を作成し、その熱膨張率をSpring-8の共用ビームラインを用いた粉末X線回析により詳細に解析した。解析の結果、CuOの反強磁性転移温度(約210K)よりも低温(175K以下)で熱膨張率が大きな負の値(-1.1×10^-4/℃)をとることを発見した。

 CuOは単純組成の遷移金属反強磁性体であり、強いスピン・格子相関を持つことが知られている。鄭教授等は、同じく強いスピン・格子相関を持つ2フッ化マンガン(MnF_2)ナノ粒子の熱膨張率も解析し、同様に反強磁性転移温度(約67K)以下で負の値をとることを確認している。スピン・格子相関の弱い酸化ニッケル(NiO)ナノ粒子や、マイクロメートルサイズのCuO粒子、MnF_2粒子では負の熱膨張率は観測されないことから、今回発見された負の熱膨張率はスピン・格子相関の強い磁性ナノ粒子に特有のものであると考えられる。

 CuOが負の熱膨張率を持つ温度は175K以下と低温であるが、今後さらなる研究により、磁性ナノ粒子における負の熱膨張率の発現機構が解明され、高温でも負の熱膨張率を持つナノ材料が開発されることが期待される。 

(産業技術総合研究所 今村裕志)