145.01

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【分野】磁性材料

【タイトル】計算科学を用いた新規磁性材料探索の高速化

【出典】
“Accelerated discovery of new magnets in the Heusler alloy family”,
Stefano Sanvito, Corey Oses, Junkai Xue, Anurag Tiwari, Mario Zic, Thomas Archer, Pelin Tozman, Munuswamy Venkatesan, Michael Coey and Stefano Curtarolo
Science Advances, 3, e1602241 (2017)

【概要】
S. SanvitoらはDFT計算をベースに、ホイスラー合金系の電子構造に関する広範なライブラリを作成し、その中から熱力学的に安定でかつ磁性を持つ材料を予測した。新たに設計した化合物を実験的に作製し磁性特性を測定したところ、予測と非常に良い一致を示した。以上の結果は新規磁性材料を効率的に発見する方法として期待される。

MSJ145

【本文】
計算科学によって多くの化合物の中から良好な磁気特性を予測することは磁性材料探索の高速化につながる。S. Sanvitoら3元系の化合物であるホイスラー合金においてこれを実現することを目的として、55種類の元素から考えうる全てのホイスラー合金について理論的なスクリーニングと磁性特性の予測を行った。本研究では考えうる236,115種類のホイスラー合金全てに対して密度勾配近似(GGA-DFT)を用いた計算を行いそれらの電子構造を調べた。
まず各合金について、そのエンタルピーが、構成する3元素のエンタルピーの和よりも小さくなる物だけを選別し35,602種類まで候補を絞った。次に構成する元素に関して、2元系化合物のデータベースと比較することで熱力学的に安定である物が248種類だけ存在すると分かった。本研究の計算結果をもとにすると、このうち22種類が磁性を持ちうることが予測された。一方、磁気転移温度の予測は、実験的に知られている約40種類のホイスラー合金の強磁性転移温度からの回帰分析によって見積もった。以上の方法により、磁性を持つと予測される新しい材料のうち、Co2MnTiが940 Kと最も高い転移温度を持つ強磁性であり、またMn2PtPdの基底状態が反強磁性であることが予測された。
最後に候補となる化合物のうち上記を含む4種類の候補を実験的に作製し、磁気特性を測定した。その結果、Co2MnTiは強磁性を持ち、その転移温度が938 Kと予測と非常に良い一致を示した。またMn2PtPdにおいても予想通り、反強磁性を示すことが明らかになった。以上の結果から、本手法を用いることで新規磁性材料の探索が高速化することが期待される。

(東大物性研 谷内敏之)