134.01

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【分野】磁性材料

【タイトル】高温でネオジム磁石を上回る特性を有するサマリウム系永久磁石の開発

【出典】
日本金属学会2016年春季(第158回)大会 (概要3月9日発行、講演3月24日)
T. Kuno, S. Suzuki, K. Urushibata, K. Kobayashi, N. Sakuma, M. Yano, A. Kato, and A. Manabe “(Sm,Zr)(Fe,Co)11.0-11.5Ti1.0-0.5 compounds as new permanent magnet materials” AIP advances 6, 025221 (2016).
静岡理工科大学 記者発表 (2016年3月11日)、日刊工業新聞 (2016年3月21日)など

【概要】
高効率モーター用磁性材料技術研究組合(MagHEM)に参画する静岡理工科大学のグループは、(Sm0.8Zr0.2)(Fe0.75Co0.25)11.5Ti0.5からなる組成の磁石が、300 Kでの飽和磁化が1.63 T、異方性磁場は5.90 MA/mを有し、磁石材料として有望であることを発表した。また今回開発された磁石はバルク化が可能であり、473 Kでの飽和磁化と異方性磁場はNd2Fe14B相の値を上回ることを示した。今後、ネオジム磁石を超える磁気特性を有する新規希土類磁石の開発に向けた研究に発展がもたらされると期待される。

【本文】
1983年6月、Nd2Fe14B相を主相とするネオジム磁石が発表され、その後永久磁石の世界を劇的に変えた。永久磁石研究のトレンドには時代の変遷が見られるが、最近の主流はネオジム磁石の高特性化である。特に、高特性を有するバルク永久磁石の量産に適していることから、ハイブリッドカーや電気自動車、風力発電機などの用途で用いられており、今後需要の拡大が見込まれている。しかし、ネオジム磁石の温度特性は580 K程度にCurie温度を持つNd2Fe14B相に支配されているため、室温では高い残留磁化と保磁力を持つが、Curie温度よりも100℃程度低い温度で大幅に低下してしまう。したがって、ネオジム磁石を上回る次世代の磁石として、Curie温度、飽和磁化、異方性磁場が高い強磁性相の発見が熱望されており、多くの開発研究が行われている。2016年3月、高効率モーター用磁性材料技術研究組合(MagHEM)に参画する静岡理工科大学のグループは、(Sm0.8Zr0.2)(Fe0.75Co0.25)11.5Ti0.5相が磁石材料として有望であることを発表した。この磁石相の結晶構造はThMn12型であり、基本組成はSmFe11Tiが研究されていた。この特性向上のために、磁化とCurie温度を高めるためにFeの4分の1をCoで置換し、Ti量を減らす代わりにSmの20%をZrで置換することで結晶構造の安定化が図られ、実現に至った。また、焼結によるバルク化が可能であることは特筆に値する。この磁石の飽和磁化と異方性磁場は、室温ではネオジム磁石とほぼ同等であるが、Curie温度が900 Kと高いために温度特性が良好であり、473 Kでも1.50 Tの飽和磁化と、3.70 MA/mの異方性磁場を有し、いずれもNd2Fe14B相の特性値を上回ることが示された。この研究は、新規磁性材料の設計指針に関して示唆的であり、実験だけでなく理論研究の対象としても興味をもたれると思われる。今後の永久磁石研究の発展と広がりが期待される。
(大同特殊鋼 秋屋貴博)