126.02

分野:
磁気応用
タイトル:
TMR素子を利用した心磁計の開発
出典:
JSTプレスリリース(2015年7月23日)
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20150723/index.html
安藤康夫:「強磁性トンネル接合を用いた高感度磁場センサの開発と展望」、
日本磁気学会第203回研究会資料
 
 
概要:
東北大学の安藤らの研究グループは、生体磁気計測を目的とし、トンネル磁気抵抗TMR)素子を利用した磁気センサを開発した。膜構成や素子アレイ化などによるTMR磁気センサの高感度化に成功し、TMRを使った磁気センサによる初の心磁図計測実験が行われた。
 
 
本文:
 既に実用化されている心磁計・脳磁計として、超伝導量子干渉素子(SQUID)を利用したシステムがある。しかし、SQUIDセンサを利用する際には液体ヘリウムによる冷却が必要である事がデメリットとされてきた。そこで、冷却の必要が無い室温の磁気センサによる計測システムの実現が切望されている。東北大学の安藤らはトンネル磁気抵抗(Tunnel Magnetoresistance : TMR)効果を用いたTMR磁気センサの開発を行い、心磁図計測実験を行った。
 本研究ではTMR素子の磁気感度向上のためフリー層にCoFeSiB/Ru/CoFebが採用され、CoFeSib膜厚を100nm とした時に最大115%/Oeの磁場感度が得られ、磁気抵抗曲線のヒステリシスも小さくなることが分かった。また、TMR素子のアレイ化によってノイズが低減されることが確認された。100個の素子を直列に接続したアレイ状素子を一つのグループとし、グループを直列または並列に接続した時のノイズ電圧が計測された。直列数を増やす事で素子1個にかかる電圧が小さくなり、これに従ってノイズも小さくなることが実験的に示された。素子をアレイ化するにあたり、これまでは1inch 角基板での素子製造だったが、3inch 基板上へのアレイ素子製作プロセスが検討され、より効率的な素子製作が可能となった。
心磁図計測のデモンストレーションとして、励磁コイルによる擬似信号と、ヒト胸部での心磁図計測の結果が示された。後者の実験結果では、心電図との同時計測による加算平均処理やフィルタ処理を施し、心磁信号が観測された。安藤らによると、感度が100倍向上すれば脳磁計測も可能になるという。
これまでにもインダクションコイルやフラックスゲート磁束計、MIセンサ、薄膜磁界センサなどの室温で動作する磁気センサを利用した心磁図計測に関する研究がおこなわれてきた。本研究は、TMR素子を利用した新しい生体磁気計測システムの可能性を示唆するものである。TMR素子は小型化できることが特徴であるとされ、その利点を生かしてウェアラブルな心磁計または脳波計が提案されている。ウェアラブル心磁計の実現には、地磁気や都市雑音、体動による磁気変動などの多種多様な磁気ノイズから、微弱な心磁波形を取り出す技術も重要である。これらの、従来の心磁計よりも格段に困難な磁気ノイズ対策がクリアできれば、新しい生体信号検出デバイスとして期待できるものと思われる。

(金沢工業大学 小山大介)