138.01

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【分野】磁気応用

【タイトル】妊娠中のMRI検査が胎児及び乳幼児に与える影響

【出典】
Joel G. Ray, Marian J. Vermeulen, Aditya Bharatha, Walter J. Montanera, and Alison L. Park, “Association Between MRI Exposure During Pregnancy and Fetal and Childhood Outcomes,” The Journal of the American Medical Association, Vol. 316, No. 9, pp.952-961, 2016. doi:10.1001/jama.2016.12126.

【概要】
St. Michael’s病院(カナダ・トロント)のRayらは、妊娠初期におけるMRI検査が胎児・乳幼児に与える影響の有無を調べた。母体のMRI検査の有無は、胎児や幼児期における成長を害するリスク増加に関連しない。一方、ガドミウム造影剤を用いたMRI検査は妊娠中の時期に関わらず、皮膚疾患の出現や新生児死亡、死産のリスク増加に関連していた。

【本文】
 MRI(Magnetic Resonance Imaging: 磁気共鳴画像)は現代医療においては欠かせない画像診断装置となっている。同様に活躍する画像診断装置としてX線CT(Computed Tomography)があるが、MRIは放射線被爆がゼロであることからX線CTに比べて安全な画像診断装置であるとされており、妊婦を対象とした検査にはMRIを使うべきであるとされてきた。妊娠中のMRI検査は胎児、特に妊娠中期から後期の胎児に対しては安全であると考えられている。一方、妊娠初期の胎児が受ける影響については未知であった。また、MRI検査では組織間コントラストをつけるためのガドミウム造影剤が用いられるが、胎児に対するガドミウム造影剤の安全性も明らかになっていなかった。
 そこで、St. Michael’s病院(カナダ・トロント)のRayらは、カナダ・オンタリオ州において2003年から2015年の12年間に誕生した乳幼児について、妊娠初期におけるMRI検査の影響の有無及び、ガドミウム造影剤の影響を調査した。
 調査対象となった1,424,105人のうち、5,654人がMRI検査を受けた母から生まれた乳幼児であり、1,737人が妊娠初期でのMRI検査だった。1000人あたりのリスク差は死産及び新生児死亡が4.7、先天性異常が3.8、視覚障害が1.1、聴覚障害が0.3、腫瘍が-0.3であり、妊娠初期のMRI検査による明らかなリスク増加はみられなかった。一方、ガドミウム造影剤を用いたMRI検査(妊娠時期に関わらず)を受けた例は397件あり、MRI検査を受けなかった乳幼児と比べたリスク差は腎性全身線維症では0.0と顕著な差は見られなかったが、リウマチ性、炎症性または浸潤性の皮膚症状のリスク差が1000人当たり45.3、死産及び新生児死亡が45.7と高い割合になった。
 本論文では結論として、「妊娠初期における母体のMRI検査は、MRI検査を受けなかった場合と比べて胎児や乳幼児の成長の阻害するリスクに関連しない。一方、ガドミウム造影剤を利用したMRI検査は、皮膚疾患や死産、新生児死亡のリスクの増加に関連する。」と述べられている。MRI検査の信頼性や安心度を高めるために、非常に有意義な研究成果であると思われる。
(金沢工業大学 先端電子技術応用研究所 小山大介)