98.01

分野:
磁気応用(生体磁気)
タイトル:
短時間聴覚刺激による脳磁界聴性定常応答の搬送波周波数の違いによる遷移状態の検討
出典:
Steady-state MEG responses elicited by a sequence of amplitude-modulated short tones of different carrier frequencies,  Kuriki S, Kobayashi Y, Kobayashi T, Tanaka K, Uchikawa Y, Hear Res. 296: pp.25-35, 2012.
 
 
概要:
 聴覚定常応答(ASSR)とは1 s以上持続するAM変調音(変調周波数40 Hz)を呈示したときに誘発される大脳聴覚野の反応である.近年,乳幼児を対象にASSRを指標とした新たな他覚的聴力検査を確立する試みがある.しかし,多くの研究は10 s以上持続するAM変調音を呈示したときの平均的な振幅的について評価しており,AM変調音の特性(キャリア周波数や音圧)が短時間で変化したときの研究報告は少ない.将来,ASSRを工学的,医学的に応用することを考えた場合,外部環境により変化するASSRの遷移状態を理解する必要がある.本研究では,等ラウドネス曲線を基準に低音域を増幅させた6種類のキャリア周波数を,短時間(780 ms)で変化させる聴覚刺激を行い,そのときの脳磁界を計測した.結果,ASSRの振幅は与えた音圧に応じた振幅特性となった.
 
 
本文:
 本実験では,等ラウドネス曲線(音の周波数を変化させたときに等しい音の大きさになる音圧レベルを測定し,等高線として結んだもの)を基準に低音域を増幅させた刺激音圧(SPL:Sound Pressure Level)の聴覚刺激を呈示したときの脳磁界聴性定常応答を評価した.さらに本研究では,将来への応用を考え,1音の呈示時間を短時間(0.78s)で連続的に呈示した.その結果,聴性定常応答の振幅特性と搬送波周波数440-990HzのSPLは高い相関関係にあった.このことから聴性定常応答の振幅により人の感じる音の大きさを定量的に評価することが可能である.一方で,過渡応答であるN1mピーク(刺激開始後100msの反応)は有意な相関を示さなかった.聴性定常応答は反応に関係する要因が少なく,N1mは依存する要因が複雑な脳反応である.従って,聴性定常応答は聴覚機能において低次処理を反映し,N1mは高次処理を反映している可能性がある.将来,聴力検査への応用を考えた場合,依存するパラメータが少ない聴性定常応答は検査環境や誤診防止の観点から有効であることが示唆された.

(東京電機大学 田中慶太)